AWS認定全冠を達成した学習方法・勉強法・合格体験記・資格の難易度 ~How to become an ALL AWS Certifications Engineer. How to study for AWS Certifications.~ (AWS認定12冠~13冠)
Amazon Web Services(AWS)は今最もシェアを拡大しているパブリッククラウドコンピューティングサービスの一つです。
そして、AWS認定とはAWSクラウドを活用する技術的な専門知識が一定以上あることを証明するAWS公式の認定資格です。
AWS認定には2020年10月現在、合計12個の認定が存在します。
私はその12個全ての認定に合格(俗に言う12冠、全冠)し、2020年7月1日に廃止されたBig Dataの認定(既取得の認定は有効期限まで有効だが、Data Analyticsに名称・内容ともに変更され置換え)を含め、現在13個の有効な認定を保有しています(13冠)。
AWS認定を取得すると後述する様々なメリットが得られます。
より多くの人がそのメリットに気づきAWS認定に興味を持ってもらえるよう、そしてこれからAWS認定を取得しようとしている方々やAWS認定全冠を目指している方々の何かしらの参考になればと思い、私がAWS認定全冠になった経緯と学習方法を体験談として記載します。
ただし、AWS認定にはNDAがあるので出題された試験問題に関する内容を直接お伝えすることはできません。
そのため、ここでお伝えすることはあくまで私が個人的に試験前に対策として準備した内容と試験後の所感になることをご了承ください。
AWS認定全冠を目指した理由(AWS認定のメリット)
最近のIT業界ではパブリッククラウドを活用した開発が活発で、以下のような背景などもあってAWSはシステム基盤の選択肢として一般的となってきました。
- パブリッククラウドの提供するサービスが増え、Scalable、Agile、Flexible、Programmable、Globalなどといったオンプレミスでは実現が難しい利便性をより安価に提供するようになってきた
- 特にAWS、GCP、Azureの3大クラウドなどではセキュリティ対策が強化され、金融機関・政府機関にも採用されるなどオンプレミスの機密性の高いシステムも移行できるようになってきた
- 特にAWSは既にグローバルで数百万件以上、日本でも数十万件の利用があり、AWS活用を促進するパートナーも数多く存在するため、世界中のITシステムソリューションでAWSの活用が今後も加速することが予想される
このような背景に加えて、AWS認定の学習過程で得られる専門知識からAWS認定の魅力には以下のようなものが挙げられます。
- 世界でも日本でもIT業界のコアスキルになりつつあるAWSの技術的な専門知識を定量的に証明することができる
- AWSが世界展開しているサービスなのでAWS認定はグローバルに評価される
- 働く国や会社によっては昇給、昇格の対象にもなり、就職・転職においても専門知識の証明になるなどITエンジニアとしての市場価値を高められる
- 学習の過程及び合格することで受験するAWS認定の対象分野を効率よく学習できる
- AWS認定は出題される問題からも重要な点や新たな発見など学ぶことが多い
- AWS認定に合格できるレベルに到達する頃には、ベストプラクティスをはじめとした知識が身につき、受験するAWS認定の対象分野でAWSエンジニア達の会話についていけるようになる
- AWS認定を全て取得するとAWSサービス全体を見渡してベストプラクティスを考慮したソリューションを選択するための引き出しを増やすことができる
私はこれらのAWS認定の持つメリットに魅力を感じ、AWS認定の全取得を目指しました。
ただ、私が大切にしているのは「AWS認定全冠はゴールではなく、AWSの基礎知識の習得である」という価値観です。
つまり、AWS認定をすべて取得して維持し続けてこそ変化の激しいAWSを全体的に把握し続けることができ、ようやくその時点のスタート地点に立てるという感覚を大切にしています。
AWS認定の有効期限と再認定のルール
AWS認定の有効期限は3年間です。
また、AWS認定の再認定は有効期限の3年間のうちに再度、同じ認定試験を受験して合格することです。
再認定に合格すると合格日から3年間、有効期限が延長されます。
※有効期限日から3年間延長されるわけではないので注意しましょう。
AWS認定の受験料金
AWS認定の受験料金はProfessionalおよびSpecialtyのタイプが30,000円、Associateタイプが15,000円、Basic(AWS Certified Cloud Practitioner)が11,000円となっています。
AWS認定の模擬試験の料金はProfessionalおよびSpecialtyのタイプが4,000円、AssociateおよびBasic(Cloud Practitioner)のタイプが2,000円となっています。
ただし、AWS認定に合格すると次回から使用できる認定試験の50%割引バウチャーと模擬試験の無料バウチャーが入手できるため、次回のAWS認定は半額で、次回の模擬試験は無料で受験することができます。
個人の主観に基づくAWS認定の難易度順位
私の個人的な主観に基づくAWS認定の難易度順位を参考までに記載しておきます。
私はもともとのバックグラウンドがアプリケーションエンジニアのため、ネットワークに関する出題が多い認定は難しさを感じました。
このように、特に「Specialty」のAWS認定はAWS以外の経験も含めたエンジニアそれぞれのバックグラウンドが難易度の感じ方に反映されるかと思います。
AWS認定を取得する順番
現状、12個あるAWS認定をどのような順番で受験し、認定取得をしていけばよいかという点ですが、個人的にはどの順番でも良いと思います。
2018年10月に「Professional」や「Specialty」タイプの認定の受験に必要な下位の認定取得の前提条件が廃止になりました。そのため、ある程度AWSの実戦経験がある方の場合は自分の専門分野に近い「Specialty」の認定をいきなり受験して必要な認定だけを取得するのも良いかと思います。
ただ、AWS初心者、丁寧に基礎固めから学習したい方、クラウドアーキテクトを目指す方は、
「Cloud Practitioner」→「Associate」タイプ→「Professional」タイプ→「Specialty」タイプ
といった下位から積み上げる取得順をするとAWSを幅広く概要を知った上で、専門知識の深堀りができるため理解はしやすいかと思います。
AWS認定に共通した学習方法
AWS認定共通の学習方法としては、短期間で合格するためのテクニックとして、受験するAWS認定の試験範囲のベストプラクティスやトラブルシューティングなど重要点を先におさえて全体像を把握し、そこから残された時間で少しずつ知識を深めていくことです。
「AWS Certified Alexa Skill Builder – Specialty」のように特定のサービスに特化したAWS認定以外は特定のサービスの専門知識ばかりを深めているだけでは既存の業務知識が無い限り合格できないと思います。
受験するAWS認定の試験範囲のサービスの重要点を知り、それらのサービスを組み合わせたアーキテクチャを考えて最適なソリューションを選択できるようになる必要があります。
AWS認定に共通した学習リソース
続いて、以下に全てのAWS認定に共通で使える学習リソースについて紹介します。
英語の記事や資料が多いですが専門用語中心なので比較的理解しやすいと思います。
英語が苦手な場合はChromeの右クリックで翻訳機能を使って、なんとなくわかる日本語に変換しながら学習するのも良いでしょう。
重要なのは日本語の資料に無い情報は翻訳しながらでも英語を読みすすめて必要な知識を得ることが合格に近づく鍵です。
- 試験ガイド
- サンプル問題
- AWSサービス別資料(AWS Black Belt Online Seminar資料)
- 模擬試験
- AWSトレーニングライブラリ(デジタルトレーニング)
- AWSドキュメント
- よくある質問
- AWS ナレッジセンター
- AWS Blog日本語版
- AWS Blog英語版
- AWS Events Content
- AWS認定対策本
- Qwiklabs(SysOps Administrator – Associate)
- Hands-On Tutorials for Amazon Web Services(AWS)
- Udemy
- その他、キーワードでGoogle検索
まずは試験ガイドで受験するAWS認定の試験範囲とどのような内容が出題されるかを把握します。
次に試験ガイドとセットで掲載されているサンプル問題を解いて、ざっくりとした出題傾向や大まかな出題される知識の粒度を把握します。
AWSドキュメントは詳細で情報量も豊富ですが膨大な量なので、重要点をまとめた「AWSサービス別資料(AWS Black Belt Online Seminar資料)」から各サービスを学習することがおすすめです。
特に各AWSサービス間の連携などで広く共通使用されるAWS IAM、Amazon EC2、Amazon S3、AWS CloudFormation、AWS Organizations、Amazon CloudWatch、AWS Lambda、AWS KMS、AWS Secrets Manager、AWS Systems Manager、Amazon KinesisなどのAWSサービスは各AWS認定で必要になる知識でもあるので予め概要を学習しておいたほうが良いでしょう。
受験するAWS認定の出題傾向や重要点を確認できるため、試験直前の腕試しではなく可能な限り早い段階に受けて対策の糧とするほうが良いです。
ほぼ全ての各認定に用意され、試験準備のための要点がまとめられている「Exam Readiness」を受講します。
また、各サービスごとの「Introduction」や「Primer」などのキーワードで出てくるEラーニングを受けて各サービスの理解を深めます。
AWS認定の学習の基本はAWSドキュメントを読むことです。
AWSドキュメントはボリュームが多いため、効率よく学習するには、
「ベストプラクティス(best practice)」
「トラブルシューティング(troubleshooting)」
などの重要事項を絞り込めるキーワードでドキュメント内を検索して重要事項から学習することをおすすめします。
その後、模擬試験の出題傾向から重要と思われる概念を中心に読んだり、時間の余裕があれば全体を通しで読んでいきます。
受験するAWS認定の分野のサービスのQ&Aの内容を学習します。
受験するAWS認定の分野のサービスのAWS ナレッジセンターの内容を学習します。実際のユーザーから最も頻繁に寄せられる質問や要望に対するQ&Aがまとめられているのでとても参考になります。
日本語版AWSブログで受験するAWS認定に関連するサービスの記事(特に問題解決方法、アーキテクチャ、事例、認定が新設・改定される前にリリースされた機能追加について説明している記事)を読んでいきます。
英語版AWSブログで受験するAWS認定に関連するサービスの記事(特に問題解決方法、アーキテクチャ、事例、認定が新設・改定される前にリリースされた機能追加について説明している記事)を読んでいきます。
過去のAWS Summitやre:Inventの資料などを検索して受験するAWS認定の分野のサービスを学習します。特にre:InventのBreakout Sessionなどのセッションで説明されている内容は参考になります。
最近ではAWS認定に特化した対策本も多く出版されていますので、それらを活用して効率よく重要点を学習していくこともおすすめです。
2021年2月現在ベータ版で2021年第3四半期(7月-9月)リリース予定となっている「AWS Certified SysOps Administrator – Associate(SOA) | AWS 認定 SysOps アドミニストレーター – アソシエイト」の新しい試験「SOA-C02」では、AWSマネジメントコンソールとAWS CLIを使用してシナリオに基づいたAWSリソースの構築タスクを実際に手を動かして実行するラボ試験が追加されています。
このようなラボ試験を含むAWS認定に必要な最低限の実践スキルを身につけるのにQwiklabsが役立ちます。Qwiklabsには他にも様々な実践的なラボが用意されており、「セルフペースラボ」にもQwiklabsのリンクがまとめられています。AWS認定の分野に合わせてQwiklabsで基本的なAWSの操作を学習し、それ以外でも自分のAWSアカウントを作ってコストに気をつけながら日頃から実際に手を動かして実験をする習慣をつけるとさらに理解が深まります。
こちらも上記と同様に「AWS Certified SysOps Administrator – Associate(SOA) | AWS 認定 SysOps アドミニストレーター – アソシエイト」の新しい試験「SOA-C02」の対策ができるAWS公式のハンズオンのチュートリアルです。説明と画面の画像でハンズオンの内容がわかりやすく解説されています。日本語版もありますが英語版の方が利用できるハンズオンの件数が多いので英語版がおすすめです。
また、UdemyなどのサードパーティのEラーニングサービスも余裕があれば活用します。
AWSのサービス名、模擬試験でわからなかった用語、その他上記リソースを読んでも内容がわからなかったキーワードなどで検索して出てきたブログなどを参考にします。
日本語だけではなく英語で検索して英語圏のサイトから日本語サイトには無い情報を探すことも知識を増やすことにつながるためおすすめです。
認定試験の受験中に気をつけていること
私が実際の認定試験の受験中に気をつけていることをいくつか挙げておきます。
特に「試験時間の最後まで見直しをする」かどうかは人によってかなり異なると思うので、自分にあったやり方を見つけていただければと思います。
私の場合は試験中の余った時間も学習する時間と考えているため、体調が悪くならない限り最後まで粘っています。
また、2021年2月現在ベータ版で提供されている新しい試験「AWS 認定 SysOps アドミニストレーター – アソシエイト(SOA-C02)」などのラボ試験を含むAWS認定では、用意された試験時間の中で選択式の試験とラボ試験の両方を完了する必要がありますが、選択式の試験を完了してラボ試験を開始すると選択式の試験には戻れなくなります。
SOA-C02の試験ガイドでは各ラボ試験に20分ずつ残すことを計画するように記載されているので、それを基準に5分間の時間的余裕を積んで1つのラボ試験に25分を割り当てるなど、選択式の試験とラボ試験の時間配分を自分で予め決めておくと選択式の試験の見直し時間の割り当てがしやすいです。
AWS認定全冠を目指すためのスケジュール感
AWS認定全冠を目指しているのであれば、合格・不合格関係なく、1ヶ月に最低1回は受験するなど定期的に受験するルールを作って習慣化することがおすすめです。
AWS認定は分野毎に分かれてはいますが、AWSを理解する上で全体的に知っておくべき知識や各AWS認定で重複する知識もかなりあります。
そのため、前回受験した認定の知識が次回受験する認定に活かせるということが多々あります。
AWS認定の学習過程、受験の中で得た知識が陳腐化しない1ヶ月前後に新たなAWS認定を受験するという月次運用をしていくと分野をまたいで連鎖的に理解も深まりやすいです。
AWS認定全冠を維持するためのスケジュール感
AWS認定全冠を達成した後の全冠維持にも再認定をしながら新しい認定に備えた学習をする習慣は大切だと感じています。
AWS認定は前述したように3年間の有効期限があります。また、新しい分野の認定も発表される可能性もあります。
そのため私の場合は業務の繁忙期や新規認定の発表にも備えて、3年間の有効期限が残り1年になった時点で、その残り1年間を再認定取得期間と位置づけて再認定を取るようにしています。
また、新しい認定が発表される可能性に備えて次にAWS認定が新設されそうな分野をラーニングパスを参考にして少しずつ予習するようにしています。
AWS認定ベータ版の特徴・メリット・学習方法
AWS認定は定期的に新しい認定が追加されて現在12種類の認定まで増えてきました。
AWS認定は正式に新しく追加される前にベータ版という形でリリースされ、試験的に受験者を募る期間が設けられます。
AWS認定ベータ版の特徴には以下のような点が挙げられます。
- AWS認定ベータ版は受験料が半額
- ベータ版のベータ版受験実施期間は約1ヶ月程度
- ベータ版はベータ版受験実施期間中1回しか受験できない
- ベータ版の合格発表はベータ版受験実施期間終了後から約90日後
- ベータ版に合格すると正式リリースと同様に合格したものとして扱われる
- ベータ版に不合格の場合、正式版リリース時に無料で再受験ができるバウチャーが付与されることもある
- ベータ版を受験することで、正式版リリース前に出題傾向を知ることができる
例えばSpecialityのベータ版の場合、通常3万円のところが1万5千円で受験できます。
正式版リリースを待たずして新しいAWS認定に合格となる。
ただし、AWS認定ベータ版は英語のみでリリースされるため、英語での受験が必須です。
そのため、前述の<AWS認定に共通した学習リソース>で英語を翻訳しながら学習しても良いと記載しましたが、AWS認定ベータ版を受験する場合は英語の資料や記事は翻訳せずに学習して英語に慣れるようにすることをおすすめします。
このようにAWS認定ベータ版を受験することは非常に多くのメリットがあります。
そのため、AWS認定全冠を目指す場合はAWS認定ベータ版を受験しておくと効率よく新しいAWS認定を取得することができます。
各AWS認定それぞれの学習方法・勉強法・試験対策・合格体験記
この記事ではAWS認定全冠や各AWS認定で共通した内容を記載しましたが、実際には各AWS認定でそれぞれに特化した学習方法や試験対策が必要となります。
以下に各AWS認定それぞれの学習方法・勉強法・試験対策・合格体験記の記事へのリンクを記載しておきます。