[1956年開催(1955年映画作品対象)]第28回アカデミー賞(オスカー賞)受賞映画作品(ノミネート含む) まとめ・一覧 / List of Academy Awards(The Oscars) Nominees 〜アメリカ合衆国の優れた映画と関係者が毎年部門別に表彰されるAMPAS主催の映画賞〜

3月 10, 2026Academy Awards,Movie,Products

アカデミー賞(オスカー賞)とは

アカデミー賞(Academy Awards)とは、アメリカの映画芸術科学アカデミー(Academy of Motion Picture Arts and Sciences、略称AMPAS)が毎年主催する、世界で最も権威のある映画賞の一つです。アメリカ合衆国における映画芸術と科学技術の発展・品質向上を目的として、映画制作に携わるプロデューサー、監督、脚本家、俳優、技術スタッフなどの関係者を部門別に表彰し、その功績を讃えます。

受賞者には賞金は授与されませんが、公式には「Academy Award of Merit」と呼ばれる金色のオスカー像(Oscar statuette)が贈られるため、一般的に「オスカー賞(The Oscars)」の名でも広く知られています。

アカデミー賞の歴史は、世界三大映画祭であるカンヌ国際映画祭(1946年開始)、ベルリン国際映画祭(1951年開始)、ヴェネツィア国際映画祭(1932年開始)よりも古く、第1回授賞式は1929年5月16日にハリウッドのルーズベルトホテルで開催されました。以来、毎年世界中が注目する映画界最大のイベントとして続いています。

アカデミー賞のノミネートおよび受賞結果は世界各国で大きく報道され、対象映画の興行収入や動画配信サービスでの視聴数に多大な影響を与えます。ノミネート作品や受賞作品は、映画業界を代表する著名なプロデューサー、監督、脚本家、俳優、批評家などの選考委員(アカデミー会員)による厳正な投票によって決定されるため、その評価は極めて高い信頼性を持っています。

第28回アカデミー賞(1956年開催)の概要

第28回アカデミー賞(28th Academy Awards)の授賞式は、1956年3月21日にアメリカ・カリフォルニア州ハリウッドのRKOパンテージズ・シアター(RKO Pantages Theatre)とニューヨークのNBCセンチュリー・シアター(NBC Century Theatre)の2会場で開催されました。司会はジェリー・ルイス(Jerry Lewis)が務めました。対象作品は1955年に公開された映画作品です。

この年の最大の話題は、低予算のテレビ映画が劇場公開作品として再制作された『マーティ(Marty)』が作品賞・監督賞・主演男優賞・脚色賞の主要4部門を制覇したことです。主演のアーネスト・ボーグナイン(Ernest Borgnine)は、孤独な精肉店の男を繊細に演じ、アカデミー賞主演男優賞を獲得しました。また、『マーティ』は同年のカンヌ国際映画祭でもパルム・ドールを受賞しており、アカデミー賞作品賞とパルム・ドールの両方を受賞した史上2作目の映画となりました。

外国語映画賞では、稲垣浩監督の日本映画『宮本武蔵(Samurai, The Legend of Musashi)』が受賞し、日本映画の国際的な評価を高めました。また、主演男優賞にはジェームズ・ディーン(James Dean)が『エデンの東(East of Eden)』でノミネートされましたが、1955年9月に24歳で交通事故死しており、没後のノミネートとして大きな注目を集めました。

以下では、第28回アカデミー賞の全部門について、受賞作品およびノミネート作品を一覧でまとめています。映画ファンの方はぜひ参考にして、まだご覧になっていない作品をチェックしてみてください。

[1956年開催(1955年映画作品対象)]第28回アカデミー賞(オスカー賞)受賞映画作品(ノミネート含む) まとめ・一覧 / List of Academy Awards(The Oscars) Nominees 〜アメリカ合衆国の優れた映画と関係者が毎年部門別に表彰されるAMPAS主催の映画賞〜

作品賞 / Sakuhin Shou[Best Picture]

作品賞は、アカデミー賞の中で最も権威ある部門であり、その年に公開された映画の中で最も優れた作品に贈られます。受賞するのは映画のプロデューサーです。第28回の受賞作『マーティ(Marty)』は、もともとNBCテレビで放映された30分のテレビドラマを長編映画化した低予算作品でした。ブロンクスで働く中年の精肉店員が孤独と向き合いながら純粋な愛を見つけるという、きわめてシンプルで人間味あふれる物語が批評家・観客双方から絶賛を受けました。テレビ映画出身の作品が作品賞を受賞したのは史上初のことであり、また同年のカンヌ国際映画祭でもパルム・ドールを獲得し、アカデミー賞とパルム・ドールの両方を受賞した史上2作目の映画という歴史的快挙も達成しました。

受賞
Winner
マーティ[Marty] ⇒ Harold Hecht for United Artists

ノミネート
Nominees

慕情[Love Is a Many-Splendored Thing] ⇒ Buddy Adler for 20th Century Fox
ミスタア・ロバーツ[Mister Roberts] ⇒ Leland Hayward for Warner Bros.
ピクニック[Picnic] ⇒ Fred Kohlmar for Columbia Pictures
バラの刺青[The Rose Tattoo] ⇒ Hal B. Wallis for Paramount Pictures

監督賞 / Kantoku Shou[Best Director]

監督賞は、映画全体の芸術的・技術的ビジョンを統括した監督の卓越した演出に対して贈られる賞です。受賞したデルバート・マン(Delbert Mann)は、テレビ業界で多数のドラマ演出を手掛けてきた新鋭監督であり、『マーティ』は彼の長編映画デビュー作でした。ドキュメンタリーに近いロケーション撮影と俳優に自然な演技を引き出すテレビ的手法が高く評価され、ハリウッドの大御所監督たちを押さえて受賞という快挙を成し遂げました。ノミネートには、『エデンの東』でジェームズ・ディーンを発掘したエリア・カザン、後に『アラビアのロレンス』『ドクトル・ジバゴ』で世界的評価を得るデヴィッド・リーンなど、錚々たる顔ぶれが揃いました。

受賞
Winner
マーティ[Marty] ⇒ デルバート・マン[Delbert Mann]

ノミネート
Nominees

日本人の勲章[Bad Day at Black Rock] ⇒ ジョン・スタージェス[John Sturges]
エデンの東[East of Eden] ⇒ エリア・カザン[Elia Kazan]
ピクニック[Picnic] ⇒ ジョシュア・ローガン[Joshua Logan]
旅情[Summertime] ⇒ デヴィッド・リーン[David Lean]

主演男優賞 / Shuen Danyuh Shou[Best Actor]

主演男優賞は、映画の主役を演じた男性俳優の中で最も優れた演技に贈られる賞です。受賞したアーネスト・ボーグナイン(Ernest Borgnine)は、ブロンクスで働く不器用な精肉店員マーティを、過剰な演技を一切排したリアリズムで演じ、観客の共感を集めました。それまで悪役のイメージが強かったボーグナインにとって、この受賞はキャリアの大きなターニングポイントとなりました。また、この年のノミネートには、1955年9月30日に24歳の若さで交通事故により急逝したジェームズ・ディーン(James Dean)が『エデンの東』でノミネートされており、アカデミー賞史上最初の没後ノミネートの1人として世界中の映画ファンの注目を集めました。フランク・シナトラも薬物依存症の男性を演じた『黄金の腕』でノミネートされるなど、強力な候補が揃ったなかでのボーグナインの受賞は特に輝かしいものでした。

受賞
Winner
マーティ[Marty] ⇒ アーネスト・ボーグナイン[Ernest Borgnine]

ノミネート
Nominees

情欲の悪魔[Love Me or Leave Me] ⇒ ジェームズ・キャグニー[James Cagney]
エデンの東[East of Eden] ⇒ ジェームズ・ディーン[James Dean]
黄金の腕[The Man with the Golden Arm] ⇒ フランク・シナトラ[Frank Sinatra]
日本人の勲章[Bad Day at Black Rock] ⇒ スペンサー・トレイシー[Spencer Tracy]

主演女優賞 / Shuen Danyuh Shou[Best Actress]

主演女優賞は、映画の主役を演じた女性俳優の中で最も優れた演技に贈られる賞です。受賞したアンナ・マニャーニ(Anna Magnani)はイタリアを代表する大女優で、テネシー・ウィリアムズの戯曲を原作とした『バラの刺青(The Rose Tattoo)』で、シシリア系アメリカ人の未亡人を情熱的かつ繊細に演じ、アカデミー賞初受賞を果たしました。マニャーニは英語が堪能ではなかったにもかかわらず英語で演じ切ったことが特筆されます。ノミネートには、後年4度目の主演女優賞ノミネートとなる不屈の女優スーザン・ヘイワードの『明日泣く』や、「ハリウッド最強の女優」とも称されたキャサリン・ヘプバーンの『旅情』などが名を連ねた激戦となりました。

受賞
Winner
バラの刺青[The Rose Tattoo] ⇒ アンナ・マニャーニ[Anna Magnani]

ノミネート
Nominees

明日泣く[I’ll Cry Tomorrow] ⇒ スーザン・ヘイワード[Susan Hayward]
旅情[Summertime] ⇒ キャサリン・ヘプバーン[Katharine Hepburn]
慕情[Love Is a Many-Splendored Thing] ⇒ ジェニファー・ジョーンズ[Jennifer Jones]
わが愛は終りなし[Interrupted Melody] ⇒ エリノア・パーカー[Eleanor Parker]

助演男優賞 / Joen Danyuh Shou[Best Supporting Actor]

助演男優賞は、映画の主役を引き立てる助演の男性俳優に贈られる賞です。受賞したジャック・レモン(Jack Lemmon)は、後にアカデミー賞主演男優賞を2度受賞する(『アパートの鍵貸します』1960年、『セールスマンの死』1973年)名優ですが、この時が初受賞でした。海軍の爽快な若手士官役を軽快に演じた演技は、今後のスター街道を予感させるものでした。また、ノミネートにはジェームズ・ディーン主演作『理由なき反抗』のサル・ミネオや、主演映画でもある『マーティ』からジョー・マンテルも名を連ね、この年を代表する名作が軒並みエントリーされました。

受賞
Winner
ミスタア・ロバーツ[Mister Roberts] ⇒ ジャック・レモン[Jack Lemmon]

ノミネート
Nominees

アメリカの戦慄[Trial] ⇒ アーサー・ケネディ[Arthur Kennedy]
マーティ[Marty] ⇒ ジョー・マンテル[Joe Mantell]
理由なき反抗[Rebel Without a Cause] ⇒ サル・ミネオ[Sal Mineo]
ピクニック[Picnic] ⇒ アーサー・オコンネル[Arthur O’Connell]

助演女優賞 / Joen Joyuh Shou[Best Supporting Actress]

助演女優賞は、映画の主役を引き立てる助演の女性俳優に贈られる賞です。受賞したジョー・ヴァン・フリート(Jo Van Fleet)は、ジェームズ・ディーン演じるキャルの薄幸の母親を圧倒的な存在感で演じた『エデンの東』で受賞しました。ヴァン・フリートはブロードウェイ出身の実力派女優で、スクリーン上の存在時間はわずかでありながら、その強烈な演技は多くの批評家を唸らせました。ノミネートには『マーティ』から主人公の内気な恋人役を演じたベッツィ・ブレアも含まれており、同作の幅広い評価を示しています。また、ジャズ歌手のペギー・リーが俳優としてノミネートされたことも話題となりました。

受賞
Winner
エデンの東[East of Eden] ⇒ ジョー・ヴァン・フリート[Jo Van Fleet]

ノミネート
Nominees

マーティ[Marty] ⇒ ベッツィ・ブレア[Betsy Blair]
皆殺しのトランペット[Pete Kelly’s Blues] ⇒ ペギー・リー[Peggy Lee]
バラの刺青[The Rose Tattoo] ⇒ マリサ・パヴァン[Marisa Pavan]
理由なき反抗[Rebel Without a Cause] ⇒ ナタリー・ウッド[Natalie Wood]

脚本賞 / Kyakuhon Shou[Best Story and Screenplay]

当時の脚本賞(Best Story and Screenplay)は、直接映画のために書かれたオリジナルのストーリーおよびその脚本化を評価する部門です。現在の「オリジナル脚本賞」に相当します。受賞した『わが愛は終りなし(Interrupted Melody)』は、脊髄性小児麻痺を患いながらもオペラ歌手として復活を果たしたオーストラリア出身の実在の人物、マージョリー・ローレンスの波乱万丈の半生を描いた感動的なバイオピック(伝記映画)です。ウィリアム・ルドウィグとソニア・レヴィンのコンビが実話をドラマティックに脚色した脚本が高く評価されました。

受賞
Winner
わが愛は終りなし[Interrupted Melody] ⇒ ウィリアム・ルドウィグ[William Ludwig]、ソニア・レヴィン[Sonya Levien]

ノミネート
Nominees

軍法会議[The Court-Martial of Billy Mitchell] ⇒ ミルトン・スパーリング[Milton Sperling]、エメット・レイヴリー[Emmet Lavery]
いつも上天気[It’s Always Fair Weather] ⇒ B・カムデン[Betty Comden]、A・グリーン[Adolph Green]
ぼくの伯父さんの休暇[Mr. Hulot’s Holiday] ⇒ ジャック・タチ[Jacques Tati]、アンリ・マルケ[Henri Marquet]
エディ・フォイ物語[The Seven Little Foys] ⇒ メルヴィル・シェイヴルソン[Melville Shavelson]、ジャック・ローズ[Jack Rose]

脚色賞 / Kyakushoku Shou[Best Screenplay]

当時の脚色賞(Best Screenplay)は、既存の小説・舞台劇・その他の作品を原作として映画用に改稿した脚本に贈られる部門です。現在の「脚色賞」に相当します。受賞したパディ・チャイエフスキー(Paddy Chayefsky)は、自身がNBCテレビ向けに書いたテレビドラマを長編映画用に書き直した脚本で受賞しました。原作の親密な人間描写を損なうことなく、むしろ磨きをかけた脚本は「テレビ的リアリズムの映画化」の模範例として賞賛されました。ノミネートには『エデンの東』『暴力教室』『情欲の悪魔』など、この年の代表作が並びました。

受賞
Winner
マーティ[Marty] ⇒ パディ・チャイエフスキー[Paddy Chayefsky]

ノミネート
Nominees

日本人の勲章[Bad Day at Black Rock] ⇒ ミラード・カウフマン[Millard Kaufman]
暴力教室[Blackboard Jungle] ⇒ リチャード・ブルックス[Richard Brooks]
エデンの東[East of Eden] ⇒ ポール・オズボーン[Paul Osborn]
情欲の悪魔[Love Me or Leave Me] ⇒ ダニエル・フックス[Daniel Fuchs]、イソベル・レナート[Isobel Lennart]

原案賞 / Genan Shou[Best Motion Picture Story]

原案賞(Best Motion Picture Story)は、映画のために書かれたオリジナルのストーリーアイデアそのものに贈られる賞で、脚本賞とは別に設けられていました。この賞は後に廃止され、現在の「オリジナル脚本賞」に統合されています。受賞した『情欲の悪魔(Love Me or Leave Me)』の原案を書いたダニエル・フックスは、1920〜30年代にかけてシカゴのナイトクラブで活躍した実在のシンガー、ルース・エッティングと彼女を支配した組織の男との複雑な関係を、当時のハリウッドとしては大胆に描いたストーリーで受賞しました。ジェームズ・キャグニーとドリス・デイが共演した本作は、この年の興行的にも大きな成功を収めました。

受賞
Winner
情欲の悪魔[Love Me or Leave Me] ⇒ ダニエル・フックス[Daniel Fuchs]

ノミネート
Nominees

ベンソン少佐の個人的な戦争[The Private War of Major Benson] ⇒ ジョー・コネリー[Joe Connelly]、ボブ・モシャー[Bob Mosher]
理由なき反抗[Rebel Without a Cause] ⇒ ニコラス・レイ[Nicholas Ray]
The Sheep Has Five Legs ⇒ ジャン・マルサン[Jean Marsan]、アンリ・トロワイア[Henri Troyat]、ジャック・ペレ[Jacques Perret]、アンリ・ヴェルヌイユ[Henri Verneuil]、ラウール・プロカン[Raoul Ploquin]
戦略空軍命令[Strategic Air Command] ⇒ バーン・レイ・Jr[Beirne Lay Jr.]

外国語映画賞 / Gaikokugo Eiga Shou[Best Foreign Language Film]

外国語映画賞は、アメリカ以外の国で制作された英語以外の言語による映画に贈られる賞です。第28回の受賞作は、稲垣浩(Hiroshi Inagaki)監督・三船敏郎主演による日本映画『宮本武蔵(Samurai, The Legend of Musashi)』でした。言わずと知れた剣豪・宮本武蔵の生涯を雄大なスケールで描いたこの時代劇が、アカデミー賞外国語映画賞という国際的な最高舞台で受賞したことは、黒澤明監督作品とともに日本映画の芸術的水準がハリウッドに認められた歴史的快挙です。日本映画にとって初のアカデミー賞受賞となり、その後の日本映画の国際的評価向上に多大な影響を与えました。なお、この部門は第29回(1957年)から正式にレギュラー部門として設置されたため、第28回の授与は名誉賞(Honorary Award)の形式でした。

受賞
Winner
宮本武蔵[Samurai, The Legend of Musashi] (日本[Japan]) ⇒ 稲垣浩 [Hiroshi Inagaki]

ノミネート
Nominees

長編ドキュメンタリー映画賞 / Chouhen Documentary Eiga Shou[Best Documentary Feature]

長編ドキュメンタリー映画賞は、長編(概ね40分以上)の記録映画に贈られる賞です。受賞した『Helen Keller in Her Story』は、耳が聞こえず目も見えないという重度のハンディキャップを乗り越え、社会福祉の分野で世界的に活躍したヘレン・ケラーの生涯を本人のインタビューを交えながら描いたドキュメンタリーです。奇跡の人とも称されるヘレン・ケラーの実際の言葉と映像が世界の人々に感動を与えました。

受賞
Winner
Helen Keller in Her Story

ノミネート
Nominees

Heartbreak Ridge

短編ドキュメンタリー映画賞 / Tanpen Documentary Eiga Shou[Best Documentary Short Subject]

短編ドキュメンタリー映画賞は、40分未満の短編記録映画に贈られる賞です。受賞した『民族と自然/北極圏の人々(Men Against the Arctic)』は、ウォルト・ディズニー・スタジオが製作した北極圏を舞台にしたドキュメンタリー短編で、過酷な自然環境と戦いながら調査活動を続ける人間の姿を記録した作品です。ディズニーが展開したドキュメンタリーシリーズ「True-Life Adventures」の系譜に連なる作品であり、同シリーズはこの時代に数多くのアカデミー賞を獲得しました。

受賞
Winner
民族と自然/北極圏の人々[Men Against the Arctic] ⇒ Walt Disney

ノミネート
Nominees

The Battle of Gettysburg
The Face of Lincoln

短編映画賞(一巻) / Tanpen Eiga Shou(Hito Maki)[Best Live Action Short Film One-Reel]

短編映画賞(一巻)は、上映時間が1リール(約10分)以内の実写短編映画に贈られる賞です。受賞した『Survival City』は、核攻撃を想定した都市防衛計画の啓発を目的としたドキュメンタリー的短編で、冷戦時代の緊張感を反映した内容の作品です。この賞は後に廃止され、現在は「短編映画賞(実写)」として一本化されています。

受賞
Winner
Survival City ⇒ Edmund Reek

ノミネート
Nominees

3rd Ave. El ⇒ カースン・デイヴィドスン[Carson Davidson]
Gadgets Galore ⇒ ロバート・ヤングソン[Robert Youngson]
Three Kisses ⇒ Justin Herman

短編映画賞(二巻) / Tanpen Eiga Shou(Futa Maki)[Best Live Action Short Film Two-Reel]

短編映画賞(二巻)は、上映時間が2リール(約20分)以内の実写短編映画に贈られる賞です。受賞した『The Face of Lincoln』は、第16代アメリカ大統領エイブラハム・リンカーンの生涯と業績を映像で振り返った作品です。この賞も一巻賞と同様に後に廃止され、現在の短編実写部門に統合されています。

受賞
Winner
The Face of Lincoln

ノミネート
Nominees

大空の戦慄[24-Hour Alert]
The Battle of Gettysburg
On The Twelfth Day
Switzerland

短編アニメ賞 / Tanpen Anime Shou[Best Animated Short Film]

短編アニメ賞は、アニメーション技法を用いた短編映画に贈られる賞です。受賞した『チーズはいただき(Speedy Gonzales)』は、ワーナー・ブラザースの人気アニメシリーズ「ルーニー・テューンズ(Looney Tunes)」に登場するメキシコ系キャラクター、スピーディー・ゴンザレスが活躍するコメディー短編です。その時代を代表するポップカルチャーを体現したキャラクターアニメーションが評価されました。ノミネートには、後年ディズニーの名脚本家となるチャック・ジョーンズが制作した作品も含まれています。

受賞
Winner
チーズはいただき[Speedy Gonzales]

ノミネート
Nominees

Good Will to Men
The Legend of Rockabye Point
No Hunting

劇・喜劇映画音楽賞 / Geki Kigeki Eiga Ongaku Shou[Best Scoring of a Dramatic or Comedy Picture]

劇・喜劇映画音楽賞は、ミュージカル以外のドラマや喜劇映画のオリジナルスコア(劇伴音楽)に贈られる賞です(当時はミュージカル映画音楽賞と分けて審査されていました)。受賞したアルフレッド・ニューマン(Alfred Newman)は、ハリウッド映画史上最多となる45回のノミニー歴と9度の受賞を誇る20世紀フォックスの首席作曲家で、香港を舞台にしたロマンス映画『慕情』の甘美なオーケストラスコアで受賞しました。ノミネートにはエルマー・バーンスタイン(後に『荒野の七人』で一世を風靡)の『黄金の腕』も含まれており、その革新的なジャズ音楽も高く評価されました。

受賞
Winner
慕情[Love Is a Many-Splendored Thing] ⇒ アルフレッド・ニューマン[Alfred Newman]

ノミネート
Nominees

愛欲と戦場[Battle Cry] ⇒ マックス・スタイナー[Max Steiner]
黄金の腕[The Man with the Golden Arm] ⇒ エルマー・バーンスタイン[Elmer Bernstein]
ピクニック[Picnic] ⇒ ジョージ・ダニング[George Duning]
バラの刺青[The Rose Tattoo] ⇒ アレックス・ノース[Alex North]

ミュージカル映画音楽賞 / Musical Eiga Ongaku Shou[Best Scoring of a Musical Picture]

ミュージカル映画音楽賞は、ミュージカル映画のスコアやアレンジに贈られる賞です。受賞した『オクラホマ!(Oklahoma!)』は、ロジャース&ハマースタインの伝説的なブロードウェイ・ミュージカルを初のワイドスクリーン(トッド・AO方式)で映画化した大作です。舞台の楽曲を映画用に豊かにアレンジし、音楽面でも映画史に残る高水準を打ち立てたロバート・ラッセル・ベネット、ジェイ・ブラックトン、アドルフ・ドイッチュのアレンジチームが受賞しました。

受賞
Winner
オクラホマ![Oklahoma!] ⇒ Robert Russell Bennett、Jay Blackton、and Adolph Deutsch

ノミネート
Nominees

足ながおじさん[Daddy Long Legs] ⇒ アルフレッド・ニューマン[Alfred Newman]
野郎どもと女たち[Guys and Dolls] ⇒ ジェイ・ブラックトン[Jay Blackton]、シリル・J・モックリッジ[Cyril J. Mockridge]
いつも上天気[It’s Always Fair Weather] ⇒ アンドレ・プレヴィン[André Previn]
情欲の悪魔[Love Me or Leave Me] ⇒ パーシー・フェイス[Percy Faith]、ジョージ・ストール[Georgie Stoll]

歌曲賞 / Kashou Shou[Best Original Song]

歌曲賞は、映画のために書かれたオリジナル楽曲に贈られる賞です。受賞した「Love Is a Many-Splendored Thing」は、同名映画の主題歌として作られた甘美なバラードで、日本では「慕情」の邦題で親しまれています。作曲家サミー・フェインと作詞家ポール・フランシス・ウェブスターが手掛けた楽曲は、その後も多くのアーティストにカバーされる名曲となりました。また、ノミネート作品の中には「Unchained Melody」(映画『Unchained』の主題歌)が含まれており、後年ライチャス・ブラザーズや映画『ゴースト/ニューヨークの幻』(1990年)でのカバーによって全世界で愛され続ける不朽の名曲です。この年の歌曲賞は特に粒ぞろいのノミネートが揃いました。

受賞
Winner
“Love Is a Many-Splendored Thing" – 慕情[Love Is a Many-Splendored Thing] ⇒ 作曲:サミー・フェイン[Sammy Fain]、作詞:ポール・フランシス・ウェブスター[Paul Francis Webster]

ノミネート
Nominees

“I’ll Never Stop Loving You" – 情欲の悪魔[Love Me or Leave Me] ⇒ 作曲:ニコラス・ブロズスキー[Nicholas Brodszky]、作詞:サミー・カーン[Sammy Cahn]
“Something’s Gotta Give" – 足ながおじさん[Daddy Long Legs] ⇒ 作詞・作曲:ジョニー・マーサー[Johnny Mercer]
“The Tender Trap" – The Tender Trap ⇒ 作曲:ジミー・ヴァン・ヒューゼン[Jimmy Van Heusen]、作詞:サミー・カーン[Sammy Cahn]
“Unchained Melody" – Unchained ⇒ 作曲:サミー・カーン[Alex North]、作詞:ハイ・ザレット[Hy Zaret]

録音賞 / Rokuon Shou[Best Sound Recording]

録音賞は、映画の音響収録・録音技術の卓越性に贈られる賞です(現在の「音響賞」に相当)。受賞した『オクラホマ!』は、映画史上初めてトッド・AO方式の70mmフィルムとステレオ多チャンネル録音を採用した大作で、劇場内を包み込む豊かなサウンドが特に評価されました。1950年代はワイドスクリーン化とともにステレオ音響技術が急速に発展した時代であり、本作はその最先端を体現した作品です。

受賞
Winner
オクラホマ![Oklahoma!] ⇒ フレッド・ハインズ[Fred Hynes]

ノミネート
Nominees

慕情[Love Is a Many-Splendored Thing] ⇒ Carlton W. Faulkner
情欲の悪魔[Love Me or Leave Me] ⇒ Wesley C. Miller
ミスタア・ロバーツ[Mister Roberts] ⇒ William A. Mueller
見知らぬ人でなく[Not as a Stranger] ⇒ Watson Jones

美術賞(白黒) / Bijutsu Shou(Shiro Kuro)[Best Art Direction Set Decoration Black and White]

美術賞(白黒)は、白黒映画のセットデザイン・美術装飾に贈られる賞です(現在は白黒・カラーの区別なく一本化)。受賞した『バラの刺青(The Rose Tattoo)』では、ルイジアナ州のシシリア系移民コミュニティを細部にわたりリアルに再現した美術チームの仕事が高く評価されました。ノミネートには、低予算ながら精緻なリアリズムを徹底した『マーティ』のブロンクスの街並み再現も含まれており、この年は「リアリズム美術」が全体的に評価された年でもありました。

受賞
Winner
バラの刺青[The Rose Tattoo] ⇒ ハル・ペレイラ[Hal Pereira]、タンビ・ラーセン[Tambi Larsen]、サム・コマー[Samuel M. Comer]、アーサー・クラムズ[Arthur Krams]

ノミネート
Nominees

暴力教室[Blackboard Jungle] ⇒ セドリック・ギボンズ[Cedric Gibbons]、ランダル・デュエル[Randall Duell]、エドウィン・B・ウィリス[Edwin B. Willis]、ヘンリー・グレース[Henry Grace]
明日泣く[I’ll Cry Tomorrow] ⇒ セドリック・ギボンズ[Cedric Gibbons]、マルコム・ブラウン[Malcolm Brown]、エドウィン・B・ウィリス[Edwin B. Willis]、ヒュー・B・ハント[Hugh Hunt]
黄金の腕[The Man with the Golden Arm] ⇒ ジョセフ・C・ライト[Joseph C. Wright]、ダレル・シルヴェラ[Darrell Silvera]
マーティ[Marty] ⇒ エドワード・S・ハワース[Ted Haworth]、Walter M. Simonds、ロバート・プリーストリー[Robert Priestley]

美術賞(カラー) / Bijutsu Shou(Color)[Best Art Direction Set Decoration Color]

美術賞(カラー)は、カラー映画のセットデザイン・美術装飾に贈られる賞です。受賞した『ピクニック(Picnic)』は、カンザス州の小さな田舎町を舞台に、夏の一日の情熱と閉塞感を美しいカラー映像で描いた作品で、舞台劇を映画化する際に必要だった「開放感」と「農村の質感」を見事に表現した美術装飾が評価されました。ノミネートにはヒッチコック監督の『泥棒成金(To Catch a Thief)』の南フランスの豪華絢爛な美術も含まれており、スタイルの全く異なる作品が競いました。

受賞
Winner
ピクニック[Picnic] ⇒ William Flannery and Jo Mielziner、Robert Priestley

ノミネート
Nominees

足ながおじさん[Daddy Long Legs] ⇒ ライル・ウィーラー[Lyle R. Wheeler]、ジョン・デ・キュア[John DeCuir]、ウォルター・M・スコット[Walter M. Scott]、ポール・S・フォックス[Paul S. Fox]
野郎どもと女たち[Guys and Dolls] ⇒ Oliver Smith and Joseph C. Wright、Howard Bristol
慕情[Love Is a Many-Splendored Thing] ⇒ ライル・ウィーラー[Lyle R. Wheeler]、ジョージ・W・デイヴィス[George Davis]、ウォルター・M・スコット[Walter M. Scott]、ジャック・スタブス[Jack Stubbs]
泥棒成金[To Catch a Thief] ⇒ ハル・ペレイラ[Hal Pereira]、ジョゼフ・マクミラン[Joseph McMillan Johnson]、サム・コマー[Samuel M. Comer]、アーサー・クラムズ[Arthur Krams]

撮影賞(白黒) / Satsuei Shou(Shiro Kuro)[Best Cinematography Black and White]

撮影賞(白黒)は、白黒映画の映像表現・撮影技術の卓越性に贈られる賞です。受賞したジェームズ・ウォン・ハウ(James Wong Howe)は、中国系アメリカ人の先駆的な映画カメラマンとして知られる巨匠で、生涯に2度のアカデミー撮影賞を受賞しています(もう1度は1963年の『ハッド』)。『バラの刺青』ではシシリア系移民の世界をドキュメンタリーに近い質感で撮り上げた白黒映像が絶賛されました。ノミネートには、ドキュメンタリータッチのニューウェーブ的手法で撮られた『マーティ』の撮影も含まれており、この年の白黒撮影賞は「リアリズム映像」の競演となりました。

受賞
Winner
バラの刺青[The Rose Tattoo] ⇒ James Wong Howe

ノミネート
Nominees

暴力教室[Blackboard Jungle] ⇒ ラッセル・ハーラン[Russell Harlan]
明日泣く[I’ll Cry Tomorrow] ⇒ アーサー・E・アーリング[Arthur Arling]
マーティ[Marty] ⇒ Jジョセフ・ラシェル[Joseph LaShelle]
Queen Bee ⇒ チャールズ・ラング[Charles Lang]

撮影賞(カラー) / Satsuei Shou(Color)[Best Cinematography Color]

撮影賞(カラー)は、カラー映画の映像表現・撮影技術の卓越性に贈られる賞です。受賞したロバート・バークス(Robert Burks)はアルフレッド・ヒッチコック監督の専属カメラマンとして知られ、南フランスのコート・ダジュールを舞台にした優雅なサスペンス映画『泥棒成金(To Catch a Thief)』の鮮やかな地中海の光と色彩を見事に捉えた映像で受賞しました。ヒッチコック作品ならではのスタイリッシュな色彩設計と卓越したカメラワークが高く評価されました。

受賞
Winner
泥棒成金[To Catch a Thief] ⇒ ロバート・バークス[Robert Burks]

ノミネート
Nominees

野郎どもと女たち[Guys and Dolls] ⇒ ハリー・ストラドリング[Harry Stradling]
慕情[Love Is a Many-Splendored Thing] ⇒ レオン・シャムロイ[Leon Shamroy]
A Man Called Peter ⇒ ハロルド・リップスタイン[Harold Lipstein]
オクラホマ![Oklahoma!] ⇒ ロバート・サーティース[Robert Surtees]

衣裳デザイン賞(白黒) / Ishou Design Shou(Shiro Kuro)[Best Costume Design Black and White]

衣裳デザイン賞(白黒)は、白黒映画の衣裳デザインの芸術性に贈られる賞です。受賞したヘレン・ローズ(Helen Rose)は、MGMの首席衣裳デザイナーとして当時のハリウッドを代表する存在で、スーザン・ヘイワード演じるシンガー・ルース・エッティングの1920〜30年代の時代感を豊かに表現した衣裳が評価されました。特に注目すべきは、日本の巨匠・溝口健二監督の名作『雨月物語(Ugetsu)』の衣裳を手がけた甲斐庄楠音(Tadaoto Kainosho)がノミネートされていた点です。西洋の映画祭で日本の衣裳美術が国際的評価を受けた歴史的な出来事であり、日本の伝統工芸・染織技術の芸術的水準がハリウッドでも認められたことを示しています。

受賞
Winner
明日泣く[I’ll Cry Tomorrow] ⇒ ヘレン・ローズ[Helen Rose]

ノミネート
Nominees

The Pickwick Papers ⇒ ベアトリス・ドーソン[Beatrice Dawson]
Queen Bee ⇒ ジャン・ルイ[Jean Louis]
バラの刺青[The Rose Tattoo] ⇒ イーディス・ヘッド[Edith Head]
雨月物語[Ugetsu] ⇒ 甲斐庄楠音[Tadaoto Kainosho]

衣裳デザイン賞(カラー) / Ishou Design Shou(Color)[Best Costume Design Color]

衣裳デザイン賞(カラー)は、カラー映画の衣裳デザインの芸術性に贈られる賞です。カラー映画においては、衣裳の色彩が映像全体の印象を大きく左右するため、撮影賞と密接に連動した部門です。受賞した衣裳は、映画の世界観と俳優の魅力を引き立てる色彩と造形で評価されました。

受賞
Winner
慕情[Love Is a Many-Splendored Thing] ⇒ チャールズ・ルメイヤー[Charles LeMaire]

ノミネート
Nominees

野郎どもと女たち[Guys and Dolls] ⇒ アイリーン・シャラフ[Irene Sharaff]
わが愛は終りなし[Interrupted Melody] ⇒ ヘレン・ローズ[Helen Rose]
泥棒成金[To Catch a Thief] ⇒ イーディス・ヘッド[Edith Head]
The Virgin Queen ⇒ チャールズ・ルメイヤー[Charles LeMaire]、メアリー・ウィルス[Mary Wills]

編集賞 / Henshuh Shou[Best Film Editing]

編集賞は、フィルムの映像・音響の最終的な組み立てに関わる編集技術の卓越性に贈られる賞です。受賞した『ピクニック(Picnic)』の編集チーム(チャールズ・ネルソンとウィリアム・A・リオン)は、ウィリアム・インジの舞台劇をダイナミックに映画化するにあたり、固定された舞台の制約を超えた流れるようなカットとリズムを実現し、特に夜の「Moonglow」のダンスシーンなど、映画史に残る名場面の編集で高い評価を受けました。ノミネートには、冒頭の激しいドラムロールから始まる強烈な印象で知られる『暴力教室(Blackboard Jungle)』も含まれており、ロック音楽と編集の革新的な組み合わせが注目されました。

受賞
Winner
ピクニック[Picnic] ⇒ チャールズ・ネルソン[Charles Nelson]、ウィリアム・A・リオン[William Lyon]

ノミネート
Nominees

暴力教室[Blackboard Jungle] ⇒ フェリス・ウェブスター[Ferris Webster]
トコリの橋[The Bridges at Toko-Ri] ⇒ アルマ・マックローリー[Alma Macrorie]
オクラホマ![Oklahoma!] ⇒ ジーン・ラギエロー[Gene Ruggiero]、ジョージ・ベームラー[George Boemler]
バラの刺青[The Rose Tattoo] ⇒ ウォーレン・ロウ[Warren Low]

視覚効果賞 / Shikaku Kouka Shou[Best Visual Effects]

視覚効果賞は、映画における特殊視覚効果の技術的・芸術的卓越性に贈られる賞です(当時は作品全体への特殊効果技術に対する賞として授与されていました)。受賞した『トコリの橋(The Bridges at Toko-Ri)』は、朝鮮戦争を舞台に海軍艦載機パイロットの苦闘を描いた戦争映画で、当時の技術の粋を結集した航空戦闘シーンのリアルな再現が高く評価されました。CG技術が存在しなかった時代に、ミニチュアモデルや実機撮影を巧みに組み合わせた特殊効果は、現代のVFX技術の原点となる革新的な仕事でした。

受賞
Winner

トコリの橋[The Bridges at Toko-Ri]

ノミネート
Nominees

暁の出撃[The Dam Busters]
雨のランチプール[The Rains of Ranchipur]

第28回アカデミー賞(1956年開催) — 総まとめ・総評

最多受賞作品と主要部門の結果

第28回アカデミー賞(1956年3月21日開催)の最多受賞作品は、『マーティ(Marty)』の4部門受賞でした。作品賞・監督賞・主演男優賞・脚色賞という主要4部門を独占するという、低予算のテレビ映画出身作品としては前例のない快挙です。次いで、『バラの刺青(The Rose Tattoo)』が主演女優賞・美術賞(白黒)・撮影賞(白黒)の3部門、『ピクニック(Picnic)』が美術賞(カラー)・編集賞の2部門、『オクラホマ!(Oklahoma!)』がミュージカル映画音楽賞・録音賞の2部門を受賞しました。

主要賞 受賞一覧

  • 作品賞:マーティ(Marty)
  • 監督賞:デルバート・マン — マーティ(Marty)
  • 主演男優賞:アーネスト・ボーグナイン — マーティ(Marty)
  • 主演女優賞:アンナ・マニャーニ — バラの刺青(The Rose Tattoo)
  • 助演男優賞:ジャック・レモン — ミスタア・ロバーツ(Mister Roberts)
  • 助演女優賞:ジョー・ヴァン・フリート — エデンの東(East of Eden)
  • 外国語映画賞:宮本武蔵(Samurai, The Legend of Musashi) — 稲垣浩監督(日本)

この年を語る上で欠かせない5つのポイント

① 「マーティ」の歴史的快挙 — テレビ映画が作品賞を制覇

『マーティ』の作品賞受賞は、映画産業とテレビ産業が激しく競い合っていた1950年代において、テレビ出身の低予算作品がハリウッドの最高峰を制するという、業界の常識を覆す象徴的な出来事でした。製作費わずか34万3000ドルという低コストで作られた本作は、アカデミー賞とカンヌ国際映画祭のパルム・ドールを同年に受賞した史上2作目の映画となり、「映画の価値は予算の大きさで決まらない」ことを世界に証明しました。

② ジェームズ・ディーンの没後ノミネート

1955年9月30日、わずか24歳でこの世を去ったジェームズ・ディーンが、遺作となった『エデンの東』での演技により主演男優賞にノミネートされました。これはアカデミー賞史上、最初の没後ノミネートのひとつとして映画史に刻まれています。ディーンはその後も翌年の第29回で『理由なき反抗』により再度ノミネートを受けており、2年連続の没後ノミネートという唯一無二の記録を持っています。

③ 日本映画2作品の国際的評価

第28回は、日本映画が国際舞台で高く評価された年として特筆されます。稲垣浩監督・三船敏郎主演の『宮本武蔵』が外国語映画賞を受賞し、日本映画として史上初のアカデミー賞受賞を達成しました。さらに、衣裳デザイン賞(白黒)のノミネートには溝口健二監督の『雨月物語』の衣裳デザイナー・甲斐庄楠音の名も刻まれており、黒澤・溝口・稲垣という日本映画の黄金期の作家たちが1950年代にハリウッドへ与えた影響の大きさを改めて示しています。

④ 「Unchained Melody」のノミネート

歌曲賞にノミネートされた「Unchained Melody」(映画『Unchained』主題歌)は、当時は受賞を逃したものの、その後数十年にわたって歌い継がれる20世紀最大のスタンダード曲のひとつとなりました。特に1990年の映画『ゴースト/ニューヨークの幻』でのライチャス・ブラザーズによるカバーが世界的大ヒットを記録し、アカデミー賞受賞こそ逃したこの曲の時代を超えた価値を証明しています。

⑤ ヒッチコック作品の技術部門での活躍

アルフレッド・ヒッチコック監督の『泥棒成金(To Catch a Thief)』は作品賞や演技部門でのノミネートはなかったものの、撮影賞(カラー)を受賞し、ロバート・バークスの映像美が国際的に認められました。ヒッチコック作品は生涯を通じてアカデミー賞から主要部門での受賞には恵まれませんでしたが、技術部門では繰り返し高い評価を受けています。

第28回アカデミー賞の歴史的意義

1956年に開催された第28回アカデミー賞は、映画産業が大きな転換期を迎えていた時代を映し出す授賞式でした。テレビの普及によってハリウッドの大手スタジオが興行収入の減少に直面する中、低予算・リアリズム路線の映画が最高賞を受賞したことは、映画制作の価値観が変化しつつあることを象徴していました。同時に、外国語映画賞での日本映画受賞や、衣裳賞での日本人デザイナーノミネートなど、アカデミー賞の視野がアメリカ映画を超えて広がっていく過渡期の様相も見て取れます。主演男優・女優賞の両方が非ハリウッド的スターに贈られた(ボーグナインとマニャーニはいずれもメインストリームの「スター」ではなかった)点も、この時代の変化を象徴しています。

第28回アカデミー賞の受賞・ノミネート作品は、1950年代アメリカ映画の多様性と芸術的豊かさを今日に伝える、映画史の重要な記録です。未見の作品はぜひこの機会にご覧ください。