[1964年開催(1963年映画作品対象)]第36回アカデミー賞(オスカー賞)受賞映画作品(ノミネート含む) まとめ・一覧 / List of Academy Awards(The Oscars) Nominees 〜アメリカ合衆国の優れた映画と関係者が毎年部門別に表彰されるAMPAS主催の映画賞〜

3月 10, 2026Academy Awards,Movie,Products

アカデミー賞(オスカー賞)は、映画芸術科学アカデミー(AMPAS: Academy of Motion Picture Arts and Sciences)が主催する、世界で最も権威ある映画賞のひとつです。アメリカ合衆国における映画の健全な発展と芸術・科学の品質向上を目的に、キャスト・スタッフなどの映画関係者を毎年部門別に表彰しています。受賞者には賞金は授与されませんが、金色のオスカー像が贈られることから「オスカー賞」の愛称でも広く知られています。

アカデミー賞の歴史は世界三大映画祭(カンヌ国際映画祭、ベルリン国際映画祭、ヴェネツィア国際映画祭)よりも古く、第1回の授賞式は1929年に開催されました。以来、世界中の映画ファンや業界関係者が毎年注目する映画界最大の祭典として定着しています。ノミネート及び受賞結果は世界中で大きく報道され、各国における対象映画の興行成績にも多大な影響を与えています。

このページでは、1964年4月13日にカリフォルニア州サンタモニカのサンタモニカ・シビック・オーディトリアムで開催された第36回アカデミー賞(The 36th Academy Awards)の受賞作品・ノミネート作品を全部門にわたって一覧で紹介します。対象となるのは1963年公開の映画作品です。

第36回アカデミー賞(1964年開催)の概要と見どころ

第36回アカデミー賞の司会はジャック・レモン(Jack Lemmon)が務めました。1964年4月13日、カリフォルニア州サンタモニカのシビック・オーディトリアムで開催されたこの授賞式は、英国映画の大躍進とアフリカ系アメリカ人俳優による歴史的快挙という2つの出来事が重なり、映画史に永く刻まれる1年となりました。

英国映画の快挙 ―「トム・ジョーンズの華麗な冒険」最多4冠制覇

作品賞を受賞した『トム・ジョーンズの華麗な冒険(Tom Jones)』は、ヘンリー・フィールディングの1749年の古典小説を原作とした痛快なピカレスク・コメディです。トニー・リチャードソン(Tony Richardson)監督が手がけたこの作品は、18世紀イギリスを舞台にアルバート・フィニー(Albert Finney)が奔放な主人公トムを生き生きと演じ、作品賞・監督賞・脚色賞・作曲賞の最多4部門を制覇しました。カメラに向かって主人公が語りかけるブレヒト的手法など実験的な演出が随所に盛り込まれ、ハリウッド大作とは一線を画す新鮮さで批評家・観客の心を掴みました。英国の独立系プロダクションが放った本作の圧倒的受賞は、1960年代の「ブリティッシュ・インヴェイジョン」を映画界で象徴する歴史的な出来事でした。

映画史を変えた瞬間 ― シドニー・ポワチエ、史上初のアフリカ系主演男優賞

主演男優賞では、シドニー・ポワチエ(Sidney Poitier)が『野のユリ(Lilies of the Field)』での演技により受賞し、アフリカ系アメリカ人俳優として史上初の主演男優賞受賞者となりました。放浪の建設労働者が孤立した修道院の修道女たちと友情を育む温かい人間ドラマの中で、ポワチエは力みのない自然な存在感で観客を引き込みました。マーティン・ルーサー・キング・ジュニア牧師の指導のもと公民権運動が最高潮を迎えていた1960年代のアメリカ社会において、この受賞はスクリーンの内外で「変化の風」を体現する歴史的事件として今も語り継がれています。

主演女優賞・助演賞と「ハッド」の3冠

主演女優賞はパトリシア・ニール(Patricia Neal)が『ハッド(Hud)』で受賞。ポール・ニューマン主演の現代西部劇で家政婦アルマを演じたニールは、抑制された中に深い情感を宿した演技で高く評価されました。同作品は助演男優賞(メルヴィン・ダグラス)・撮影賞(白黒)も受賞し計3冠を達成。助演女優賞は英国の名女優マーガレット・ラザフォード(Margaret Rutherford)が『予期せぬ出来事(The V.I.P.s)』で受賞し、英国勢のさらなる存在感を示しました。

フェリーニ「8½」の外国語映画賞受賞と世界各国の代表作

外国語映画賞では、フェデリコ・フェリーニ(Federico Fellini)監督の傑作『8½』がイタリア代表として受賞。映画監督の創作の苦悩・記憶・幻想を自伝的に融合させたこの作品は、衣裳デザイン賞(白黒)も獲得し、フェリーニの芸術的才能を世界に改めて知らしめました。ノミネートにはロマン・ポランスキー長編デビュー作『水の中のナイフ』(ポーランド)、川端康成原作・中村登監督の『古都(Twin Sisters of Kyoto)』(日本)も名を連ね、世界映画の多様な芸術性が際立つ年となりました。

超大作「クレオパトラ」が技術4部門を独占

技術部門では、エリザベス・テイラー主演の超大作『クレオパトラ(Cleopatra)』が撮影賞(カラー)・美術賞(カラー)・衣裳デザイン賞(カラー)・視覚効果賞の4部門で受賞しました。当時最高額とされた製作費約4,400万ドルを投じた同作の圧倒的な映像美・衣裳の豪華さ・視覚的スペクタクルは、アカデミー会員の広範な支持を集めました。全9部門でのノミネートは『トム・ジョーンズの華麗な冒険』と並ぶこの年最多タイの数字です。

以下に、第36回アカデミー賞の全受賞作品・ノミネート作品を部門別に掲載します。

[1964年開催(1963年映画作品対象)]第36回アカデミー賞(オスカー賞)受賞映画作品(ノミネート含む) まとめ・一覧 / List of Academy Awards(The Oscars) Nominees 〜アメリカ合衆国の優れた映画と関係者が毎年部門別に表彰されるAMPAS主催の映画賞〜

作品賞 / Sakuhin Shou[Best Picture]

作品賞(Best Picture)はアカデミー賞の最高賞であり、その年を代表する最優秀映画のプロデューサーに授与されます。第36回では英国映画『トム・ジョーンズの華麗な冒険』が、エリア・カザン監督『アメリカ アメリカ』、大作『クレオパトラ』、西部劇叙事詩『西部開拓史』、シドニー・ポワチエ主演の『野のユリ』という有力5作品の中から選出されました。英国映画がアカデミー作品賞を受賞したのは当時としても画期的な出来事であり、映画産業における国際化の潮流を示す選択でした。

受賞
Winner
トム・ジョーンズの華麗な冒険[Tom Jones] ⇒ Tony Richardson

ノミネート
Nominees

アメリカ アメリカ[America America] ⇒ Elia Kazan
クレオパトラ[Cleopatra] ⇒ Walter Wanger
西部開拓史[How the West Was Won] ⇒ Bernard Smith
野のユリ[Lilies of the Field] ⇒ Ralph Nelson

監督賞 / Kantoku Shou[Best Director]

監督賞(Best Director)は、映画の総指揮をとった監督の卓越した演出力と創造性を称える賞です。第36回では『トム・ジョーンズの華麗な冒険』のトニー・リチャードソンが受賞。ノミネートには、イタリア映画界の巨匠フェデリコ・フェリーニ(『8½』)、ギリシャ系アメリカ人の名匠エリア・カザン(『アメリカ アメリカ』)、鬼才オットー・プレミンジャー(『枢機卿』)、ベテランのマーティン・リット(『ハッド』)と世界的名監督が名を連ねた激戦の部門でした。

受賞
Winner
トム・ジョーンズの華麗な冒険[Tom Jones] ⇒ トニー・リチャードソン[Tony Richardson]

ノミネート
Nominees

⇒ フェデリコ・フェリーニ[Federico Fellini]
アメリカ アメリカ[America America] ⇒ エリア・カザン[Elia Kazan]
枢機卿[The Cardinal] ⇒ オットー・プレミンジャー[Otto Preminger]
ハッド[Hud] ⇒ マーティン・リット[Martin Ritt]

主演男優賞 / Shuen Danyuh Shou[Best Actor]

主演男優賞(Best Actor)は、その年に最も優れた演技を披露した男性主演俳優に贈られます。第36回受賞者のシドニー・ポワチエは、アフリカ系アメリカ人俳優として史上初めてこの賞を受賞するという歴史的偉業を達成しました。ノミネートには英国の実力派アルバート・フィニー(『トム・ジョーンズの華麗な冒険』)・リチャード・ハリス(『孤独の報酬』)に加え、ポール・ニューマン(『ハッド』)、レックス・ハリソン(『クレオパトラ』)ら錚々たる顔ぶれが揃い、この年の主演男優賞は映画史に残る激戦となりました。

受賞
Winner
野のユリ[Lilies of the Field] ⇒ シドニー・ポワチエ[Sidney Poitier]

ノミネート
Nominees

トム・ジョーンズの華麗な冒険[Tom Jones] ⇒ アルバート・フィニー[Albert Finney]
孤独の報酬[This Sporting Life] ⇒ リチャード・ハリス[Richard Harris]
クレオパトラ[Cleopatra] ⇒ レックス・ハリソン[Rex Harrison]
ハッド[Hud] ⇒ ポール・ニューマン[Paul Newman]

主演女優賞 / Shuen Danyuh Shou[Best Actress]

主演女優賞(Best Actress)は、その年に最も卓越した演技を見せた女性主演俳優に授与されます。受賞のパトリシア・ニールは、『ハッド』での抑制の効いた深みある演技が高く評価されました。ニールはこの受賞の翌年に脳卒中で倒れながらも奇跡的なリハビリを経て俳優業に復帰した不屈の女優としても知られ、彼女の人生そのものがドラマとして語り継がれています。ノミネートにはレスリー・キャロン、シャーリー・マクレーン、レイチェル・ロバーツ、ナタリー・ウッドと実力派が揃い、群雄割拠の激戦部門でした。

受賞
Winner
ハッド[Hud] ⇒ パトリシア・ニール[Patricia Neal]

ノミネート
Nominees

The L-Shaped Room ⇒ レスリー・キャロン[Leslie Caron]
あなただけ今晩は[Irma la Douce] ⇒ シャーリー・マクレーン[Shirley MacLaine]
孤独の報酬[This Sporting Life] ⇒ レイチェル・ロバーツ[Rachel Roberts]
マンハッタン物語[Love with the Proper Stranger] ⇒ ナタリー・ウッド[Natalie Wood]

助演男優賞 / Joen Danyuh Shou[Best Supporting Actor]

助演男優賞(Best Supporting Actor)は、主演を支えながら映画に豊かな奥行きをもたらした男性俳優に贈られます。第36回受賞者のメルヴィン・ダグラスは、『ハッド』で主人公の祖父にあたる老農場主を厳しくも情深く演じ、道徳的な物語の柱として作品を引き締めました。ダグラスは当時62歳での受賞であり、円熟した演技力が高く評価されました。ノミネートには歌手・俳優のボビー・ダーリン、往年の名優ジョン・ヒューストン(本作では俳優として出演)らが名を連ねました。

受賞
Winner
ハッド[Hud] ⇒ メルヴィン・ダグラス[Melvyn Douglas]

ノミネート
Nominees

Twilight of Honor ⇒ ニック・アダムス[Nick Adams]
ニューマンという男[Captain Newman、M.D.] ⇒ ボビー・ダーリン[Bobby Darin]
トム・ジョーンズの華麗な冒険[Tom Jones] ⇒ ヒュー・グリフィス[Hugh Griffith]
枢機卿[The Cardinal] ⇒ ジョン・ヒューストン[John Huston]

助演女優賞 / Joen Joyuh Shou[Best Supporting Actress]

助演女優賞(Best Supporting Actress)は、助演でありながら映画の印象を大きく左右した女性俳優に授与されます。第36回受賞者のマーガレット・ラザフォードは英国の名コメディエンヌであり、『予期せぬ出来事(The V.I.P.s)』での貫禄ある演技が評価されました。注目すべきはノミネートの3枠を『トム・ジョーンズの華麗な冒険』の出演者(ダイアン・シレント、イーディス・エヴァンス、ジョイス・レッドマン)が独占した点で、いかに同作の演技陣が高く評価されていたかを物語っています。

受賞
Winner
予期せぬ出来事[The V.I.P.s] ⇒ マーガレット・ラザフォード[Margaret Rutherford]

ノミネート
Nominees

トム・ジョーンズの華麗な冒険[Tom Jones] ⇒ ダイアン・シレント[Diane Cilento]
トム・ジョーンズの華麗な冒険[Tom Jones] ⇒ イーディス・エヴァンス[Edith Evans]
トム・ジョーンズの華麗な冒険[Tom Jones] ⇒ ジョイス・レッドマン[Joyce Redman]
野のユリ[Lilies of the Field] ⇒ リリア・スカラ[Lilia Skala]

脚本賞 / Kyakuhon Shou[Best Screenplay Written Directly for the Screen]

脚本賞(Best Original Screenplay)は、既存の原作を持たないオリジナル脚本に贈られる賞です。第36回では大型西部劇叙事詩『西部開拓史』のジェームズ・R・ウェッブが受賞。ノミネートにはフェリーニが共同執筆した『8½』の脚本、エリア・カザン自身の体験を昇華させた『アメリカ アメリカ』など、いずれも監督本人が脚本に深く関わった意欲作が並びました。

受賞
Winner
西部開拓史[How the West Was Won] ⇒ ジェームズ・R・ウェッブ[James R. Webb]

ノミネート
Nominees

⇒ フェデリコ・フェリーニ[Federico Fellini]、Ennio Flaiano、トゥリオ・ピネリ[Tullio Pinelli]、ブルネッロ・ロンディ[Brunello Rondi]
アメリカ アメリカ[America America] ⇒ エリア・カザン[Elia Kazan]
祖国は誰れのものぞ[The Four Days of Naples] ⇒ カロル・ベナリ[Carlo Bernari]、パスクァーレ・フェスタ・カンパニーレ[Pasquale Festa Campanile]、マッシモ・フランチオーザ[Massimo Franciosa]、ナンニ・ロイ[Nanni Loy]、ヴァスコ・プラトリーニ[Vasco Pratolini]
マンハッタン物語[Love with the Proper Stranger] ⇒ アーノルド・シュルマン[Arnold Schulman]

脚色賞 / Kyakushoku Shou[Best Screenplay Based on Material Previously Produced or Published]

脚色賞(Best Adapted Screenplay)は、小説・戯曲・実話など既存の原作をもとに書かれた脚本に贈られます。第36回では18世紀の古典小説を原作とした『トム・ジョーンズの華麗な冒険』の脚本家ジョン・オズボーンが受賞。オズボーンは英国演劇界の「怒れる若者たち」世代の旗手として知られ、映画と演劇の両分野で活躍した才人です。ノミネートには前年の外国語映画賞受賞作『シベールの日曜日』の脚色も含まれています。

受賞
Winner
トム・ジョーンズの華麗な冒険[Tom Jones] ⇒ ジョン・オズボーン[John Osborne]

ノミネート
Nominees

ニューマンという男[Captain Newman、M.D.] ⇒ リチャード・L・ブリーン[Richard L. Breen]、フィービー・エフロン[Phoebe Ephron]、ヘンリー・エフロン[Henry Ephron]
ハッド[Hud] ⇒ アーヴィング・ラヴェッチ[Irving Ravetch]、ハリエット・フランク・Jr[Harriet Frank Jr.]
野のユリ[Lilies of the Field] ⇒ ジェームズ・ポー[James Poe]
シベールの日曜日[Sundays and Cybele] ⇒ アントワーヌ・チュダル[Antoine Tudal]、セルジュ・ブールギニヨン[Serge Bourguignon]

外国語映画賞 / Gaikokugo Eiga Shou[Best Foreign Language Film]

外国語映画賞(Best Foreign Language Film)は、英語以外の言語で製作された最優秀外国映画に贈られます。第36回ではイタリア・ポーランド・ギリシャ・スペイン・日本の5カ国の代表作がノミネートされました。受賞の『8½』はフェリーニが自らの映画監督としての創作の苦悩・幻想・記憶を融合させた映画史的傑作で、後のウディ・アレンやボブ・フォッシーら多くの映画人に多大な影響を与えています。日本代表としてノミネートされた『古都(Twin Sisters of Kyoto)』は、川端康成の同名小説を原作に中村登監督が演出し、岩下志麻が双子の姉妹を一人二役で演じた、京都の四季を背景にした美しい日本映画です。

受賞
Winner
(イタリア[Italy])

ノミネート
Nominees

水の中のナイフ[Knife in the Water] (ポーランド[Poland])
夜霧のしのび逢い[The Red Lanterns] (ギリシャ[Greece])
バルセロナ物語[Los Tarantos] (スペイン[Spain])
古都[Twin Sisters of Kyoto] (日本[Japan])

長編ドキュメンタリー映画賞 / Chouhen Documentary Eiga Shou[Best Documentary Feature]

受賞
Winner
Robert Frost: A Lover’s Quarrel with the World

ノミネート
Nominees

Le Maillon et la Chaine
The Yanks Are Coming

短編ドキュメンタリー映画賞 / Tanpen Documentary Eiga Shou[Best Documentary Short Subject]

受賞
Winner
Chagall

ノミネート
Nominees

The Five Cities of June
The Spirit of America
Thirty Million Letters
To Live Again

短編映画賞 / Tanpen Eiga Shou[Best Live Action Short Film]

受賞
Winner
ふくろうの河[An Occurrence at Owl Creek Bridge]

ノミネート
Nominees

The Concert
Home-Made Car
Six-Sided Triangle
That’s Me

短編アニメ賞 / Tanpen Anime Shou[Best Animated Short Film]

受賞
Winner
The Critic

ノミネート
Nominees

Automania 2000
The Game
My Financial Career
Pianissimo

作曲賞 / Sakkyoku Shou[Best Original Score]

作曲賞(Best Original Score)は、映画のために書き下ろされた最優秀オリジナル音楽スコアに贈られます。第36回では『トム・ジョーンズの華麗な冒険』のジョン・アディソンが受賞。軽妙洒脱なハープシコードの音色を中心にした彼のスコアは、18世紀イギリスの雰囲気を見事に表現しています。ノミネートにはヘンリー・マンシーニが手がけたコメディ大作の音楽、ディミトリ・ティオムキンの壮大なオーケストラ作品など、映画音楽の巨匠たちが競い合いました。

受賞
Winner
トム・ジョーンズの華麗な冒険[Tom Jones] ⇒ ジョン・アディソン[John Addison]

ノミネート
Nominees

北京の55日[55 Days at Peking] ⇒ ディミトリ・ティオムキン[Dimitri Tiomkin]
クレオパトラ[Cleopatra] ⇒ アレックス・ノース[Alex North]
西部開拓史[How the West Was Won] ⇒ アルフレッド・ニューマン[Alfred Newman]、ケン・ダービー[Ken Darby]
おかしなおかしなおかしな世界[It’s a Mad, Mad, Mad, Mad World] ⇒ アーネスト・ゴールド[Ernest Gold]

編曲・歌曲賞 / Henkyoku Kakyoku Shou[Best Original Song Score or Adaptation Score]

受賞
Winner
あなただけ今晩は[Irma la Douce] ⇒ アンドレ・プレヴィン[André Previn]

ノミネート
Nominees

バイ・バイ・バーディー[Bye Bye Birdie] ⇒ ジョン・グリーン[Johnny Green]
パリが恋するとき[A New Kind of Love] ⇒ リース・スティーヴンス[Leith Stevens]
シベールの日曜日[Sundays and Cybele] ⇒ モーリス・ジャール[Maurice Jarre]
王様の剣[The Sword in the Stone] ⇒ ジョージ・ブランズ[George Bruns]

歌曲賞 / Kashou Shou[Best Original Song]

受賞
Winner
“Call Me Irresponsible" – パパは王様[Papa’s Delicate Condition] ⇒ 作曲:ジミー・ヴァン・ヒューゼン[Jimmy Van Heusen]、作詞:サミー・カーン[Sammy Cahn]

ノミネート
Nominees

“Charade" – シャレード[Charade] ⇒ 作曲:ヘンリー・マンシーニ[Henry Mancini]、作詞:ジョニー・マーサ[Johnny Mercer]
“It’s a Mad Mad Mad Mad World" – おかしなおかしなおかしな世界[It’s a Mad, Mad, Mad, Mad World] ⇒ 作曲:アーネスト・ゴールド[Ernest Gold]、作詞:マック・デヴィッド[Mack David]
“More" – 世界残酷物語[Mondo Cane] ⇒ 作曲:リズ・オルトラーニ[Riz Ortolani]、ミーノ・オリヴィエロ[Nino Oliviero]、作詞:ノーマン・ニューウェル[Norman Newell]
“So Little Time" – 北京の55日[55 Days at Peking] ⇒ 作曲:ディミトリ・ティオムキン[Dimitri Tiomkin]、作詞:ポール・フランシス・ウェブスター[Paul Francis Webster]

音響編集賞 / Onkyou Henshuh Shou[Best Sound Effects Editing]

受賞
Winner
おかしなおかしなおかしな世界[It’s a Mad, Mad, Mad, Mad World] ⇒ ウォルター・G・エリオット[Walter Elliott]

ノミネート
Nominees

ミサイル空爆戦隊[A Gathering of Eagles] ⇒ ロバート・L・ブラットン[Robert Bratton]

録音賞 / Rokuon Shou[Best Sound]

受賞
Winner
西部開拓史[How the West Was Won] ⇒ フランク・E・ミルトン[Franklin Milton]

ノミネート
Nominees

バイ・バイ・バーディー[Bye Bye Birdie] ⇒ チャールズ・ライス[Charles Rice]
ニューマンという男[Captain Newman, M. D.] ⇒ ウォルドン・O・ワトソン[Waldon O. Watson]
クレオパトラ[Cleopatra] ⇒ ジェームス・コーコラン[James Corcoran]、フレッド・ハインズ[Fred Hynes]
おかしなおかしなおかしな世界[It’s a Mad, Mad, Mad, Mad World] ⇒ ゴードン・E・ソーヤー[Gordon E. Sawyer]

美術賞(白黒) / Bijutsu Shou(Shiro Kuro)[Best Art Direction Set Decoration Black and White]

受賞
Winner
アメリカ アメリカ[America America] ⇒ ジーン・キャハラン[Gene Callahan]

ノミネート
Nominees

⇒ ピエロ・ゲラルディ[Piero Gherardi]
ハッド[Hud] ⇒ ハル・ペレイラ[Hal Pereira]、タンビ・ラーセン[Tambi Larsen]、サム・コマー[Samuel M. Comer]、ロバート・R・ベントン[Robert R. Benton]
マンハッタン物語[Love With the Proper Stranger] ⇒ ハル・ペレイラ[Hal Pereira]、ローランド・アンダーソン[Roland Anderson]、サム・コマー[Samuel M. Comer]、グレイス・グレゴリー[Grace Gregory]
Twilight of Honor ⇒ ジョージ・W・デイヴィス[George Davis]、ポール・グロッシー[Paul Groesse]、ヘンリー・グレイス[Henry Grace]、ヒュー・ハント[Hugh Hunt]

美術賞(カラー) / Bijutsu Shou(Color)[Best Art Direction Set Decoration Color]

受賞
Winner
クレオパトラ[Cleopatra] ⇒ ジョン・デキュアー[John DeCuir]、ジャック・マーティン・スミス[Jack Martin Smith]、ヒルヤード・ブラウン[Hilyard M. Brown]、ハーマン・ブルメンタル[Herman A. Blumenthal]、エルベン・ウェブ[Elven Webb]、モーリス・ペリング[Maurice Pelling]、ボリス・ジュラガ[Boris Juraga]、ウォルター・M・スコット[Walter M. Scott]、ポール・S・フォックス[Paul S. Fox]、レイ・モイヤー[Ray Moyer]

ノミネート
Nominees

枢機卿[The Cardinal] ⇒ ライル・ウィーラー[Lyle R. Wheeler]、ジーン・キャハラン[Gene Callahan]
ナイスガイ・ニューヨーク[Come Blow Your Horn] ⇒ ハル・ペレイラ[Hal Pereira]、ローランド・アンダーソン[Roland Anderson]、サム・コマー[Samuel M. Comer]、ジェイムズ・ペイン[James W. Payne]
西部開拓史[How the West Was Won] ⇒ ジョージ・W・デイヴィス[George Davis]、ウィリアム・フェラーリ[William Ferrari]、エディソン・ハー[Addison Hehr]、ヘンリー・グレイス[Henry Grace]、ドン・グリーンウッド・Jr[Don Greenwood Jr.]、ジャック・ミルズ[Jack Mills]
トム・ジョーンズの華麗な冒険[Tom Jones] ⇒ ラルフ・ブリントン[Ralph W. Brinton]、テッド・マーシャル[Ted Marshall]、ジョセリン・ハーバート[Jocelyn Herbert]、ジョジー・マクアヴィン[Josie MacAvin]

撮影賞(白黒) / Satsuei Shou(Shiro Kuro)[Best Cinematography Black and White]

受賞
Winner
ハッド[Hud] ⇒ ジェームズ・ウォン・ハウ[James Wong Howe]

ノミネート
Nominees

The Balcony ⇒ ジョージ・フォルシー[George J. Folsey]
The Caretakers ⇒ ルシアン・バラード[Lucien Ballard]
野のユリ[Lilies of the Field] ⇒ アーネスト・ホーラー[Ernest Haller]
マンハッタン物語[Love With the Proper Stranger] ⇒ ミルトン・クラスナー[Milton Krasner]

撮影賞(カラー) / Satsuei Shou(Color)[Best Cinematography Color]

受賞
Winner
クレオパトラ[Cleopatra] ⇒ レオン・シャムロイ[Leon Shamroy]

ノミネート
Nominees

枢機卿[The Cardinal] ⇒ レオン・シャムロイ[Leon Shamroy]
西部開拓史[How the West Was Won] ⇒ ウィリアム・H・ダニエルズ[William Daniels]、ミルトン・クラスナー[Milton Krasner]、チャールズ・ラング・Jr[Charles Lang]、ジョセフ・ラシェル[Joseph LaShelle]
あなただけ今晩は[Irma la Douce] ⇒ ジョセフ・ラシェル[Joseph LaShelle]
おかしなおかしなおかしな世界[It’s a Mad, Mad, Mad, Mad World] ⇒ アーネスト・ラズロ[Ernest Laszlo]

衣裳デザイン賞(白黒) / Ishou Design Shou(Shiro Kuro)[Best Costume Design Black and White]

受賞
Winner
⇒ ピエロ・ゲラルディ[Piero Gherardi]

ノミネート
Nominees

マンハッタン物語[Love With the Proper Stranger] ⇒ イーディス・ヘッド[Edith Head]
七月の女[The Stripper] ⇒ トラヴィラ[Travilla]
欲望の家[Toys in the Attic] ⇒ ビル・トーマス[Bill Thomas]
Wives and Lovers ⇒ イーディス・ヘッド[Edith Head]

衣裳デザイン賞(カラー) / Ishou Design Shou(Color)[Best Costume Design Color]

受賞
Winner
クレオパトラ[Cleopatra] ⇒ アイリーン・シャラフ[Irene Sharaff]、ヴィットリオ・ニーノ・ノヴァレーゼ[Vittorio Nino Novarese]、ルニエ[Renié]

ノミネート
Nominees

枢機卿[The Cardinal] ⇒ ドナルド・ブルックス[Donald Brooks]
西部開拓史[How the West Was Won] ⇒ ウォルター・プランケット[Walter Plunkett]
山猫[The Leopard] ⇒ ピエロ・トージ[Piero Tosi]
パリが恋するとき[A New Kind of Love] ⇒ イーディス・ヘッド[Edith Head]

編集賞 / Henshuh Shou[Best Film Editing]

受賞
Winner
西部開拓史[How the West Was Won] ⇒ ハロルド・F・クレス[Harold F. Kress]

ノミネート
Nominees

クレオパトラ[Cleopatra] ⇒ ドロシー・スペンサー[Dorothy Spencer]
枢機卿[The Cardinal] ⇒ ルイス・R・ロフラー[Louis R. Loeffler]
大脱走[The Great Escape] ⇒ フェリス・ウェブスター[Ferris Webster]
おかしなおかしなおかしな世界[It’s a Mad, Mad, Mad, Mad World] ⇒ フレデリック・ナドソン[Frederic Knudtson]、ロバート・C・ジョーンズ[Robert C. Jones]、ジン・フラウワー・Jr[Gene Fowler Jr.]

視覚効果賞 / Shikaku Kouka Shou[Best Visual Effects]

受賞
Winner

クレオパトラ[Cleopatra] ⇒ エミール・コーサ・Jr[Emil Kosa Jr.]

ノミネート
Nominees

鳥[The Birds] ⇒ アブ・アイワークス[Ub Iwerks]

第36回アカデミー賞(1964年)まとめ ― 映画史に残る名授賞式の全貌

受賞全体像 ― 英国映画と超大作が4冠ずつ分け合った年

1964年4月13日、カリフォルニア州サンタモニカのシビック・オーディトリアムで開催された第36回アカデミー賞(The 36th Academy Awards)は、英国映画『トム・ジョーンズの華麗な冒険』と超大作『クレオパトラ』がそれぞれ4部門を制し、受賞の二大巨頭となりました。また、アフリカ系アメリカ人俳優シドニー・ポワチエの史上初の主演男優賞受賞という歴史的出来事も重なり、映画史に永く刻まれる記念碑的な授賞式として今日も語り継がれています。

「トム・ジョーンズの華麗な冒険」4冠の歴史的意義

作品賞・監督賞・脚色賞・作曲賞の4冠を達成した『トム・ジョーンズの華麗な冒険』は、ヘンリー・フィールディングの1749年の古典小説を原作に、トニー・リチャードソン監督が独自の映像センスで現代化した傑作です。カメラに向かって主人公が語りかけるなどのブレヒト的自己言及的手法を採り入れた革新的な演出は、当時のハリウッド大作とは一線を画す新鮮さで批評家・観客の心を掴みました。英国の独立系プロダクションによる本作の大成功は、1960年代に映画・音楽双方で起きた「ブリティッシュ・インヴェイジョン」を象徴する文化的勝利として映画史に位置づけられています。

シドニー・ポワチエの主演男優賞 ― ハリウッドが変わった夜

第36回アカデミー賞で最も歴史的な意味を持つ出来事は、シドニー・ポワチエが『野のユリ(Lilies of the Field)』でアフリカ系アメリカ人俳優として史上初めて主演男優賞を受賞したことです。ポワチエが演じたのは、放浪の建設労働者ホーマー・スミス。財産も持たない彼が荒野で出会った東欧系カトリック修道女たちとともに礼拝堂を建設するという静かな物語の中で、ポワチエは力みのない自然な存在感で観客の心を動かしました。マーティン・ルーサー・キング・ジュニア牧師の指導のもと公民権運動がアメリカ全土で高まりを見せていた1964年に、ハリウッドの最高栄誉がアフリカ系俳優に授けられたことは、スクリーンの内外で「変化の時代の到来」を告げる象徴的な出来事でした。

フェリーニ「8½」とヨーロッパ映画の芸術的存在感

フェデリコ・フェリーニ監督の『8½』は外国語映画賞と衣裳デザイン賞(白黒)の2部門を受賞し、イタリア映画の芸術的水準の高さを世界に示しました。映画監督の創作の苦悩・幻想・記憶を融合させた本作は、映画史における最も野心的な自己言及的作品のひとつとして、後のウディ・アレン(『スターダスト・メモリー』)やボブ・フォッシー(『オール・ザット・ジャズ』)など多くの映画人に計り知れない影響を与えています。また、ロマン・ポランスキー長編デビュー作『水の中のナイフ』(ポーランド)、川端康成原作の『古都』(日本)のノミネートは、後の巨匠たちの初期作品がこの年に世界的な評価を受けていたことを示す、映画史的に興味深い事実です。

「クレオパトラ」が示した映画技術の粋

エリザベス・テイラーとリチャード・バートンの伝説的な恋愛でも話題を呼んだ超大作『クレオパトラ』は、撮影賞(カラー)・美術賞(カラー)・衣裳デザイン賞(カラー)・視覚効果賞の技術4部門を制覇しました。製作中の主演交代・撮影中断・製作費の膨張(最終的に約4,400万ドル、当時の記録的金額)など数多くの困難を乗り越えて完成した同作は、1963年の年間興行成績1位を記録しています。9部門でのノミネートは本年最多タイであり、大衆的エンターテインメント映画と芸術映画がともにアカデミー賞の舞台で評価されたこの年の多様性を象徴しています。

第36回アカデミー賞 主要部門受賞作品一覧

  • 作品賞:トム・ジョーンズの華麗な冒険(Tom Jones)
  • 監督賞:トニー・リチャードソン(トム・ジョーンズの華麗な冒険)
  • 主演男優賞:シドニー・ポワチエ(野のユリ)
  • 主演女優賞:パトリシア・ニール(ハッド)
  • 助演男優賞:メルヴィン・ダグラス(ハッド)
  • 助演女優賞:マーガレット・ラザフォード(予期せぬ出来事)
  • 外国語映画賞:8½(イタリア)
  • 脚本賞:ジェームズ・R・ウェッブ(西部開拓史)
  • 脚色賞:ジョン・オズボーン(トム・ジョーンズの華麗な冒険)
  • 作曲賞:ジョン・アディソン(トム・ジョーンズの華麗な冒険)
  • 撮影賞(白黒):ジェームズ・ウォン・ハウ(ハッド)
  • 撮影賞(カラー):レオン・シャムロイ(クレオパトラ)
  • 美術賞(白黒):ジーン・キャハラン(アメリカ アメリカ)
  • 美術賞(カラー):クレオパトラ制作チーム(クレオパトラ)
  • 視覚効果賞:エミール・コーサ・Jr(クレオパトラ)

第36回アカデミー賞が映画史に残した遺産

アメリカ映画だけでなく、イギリス・イタリア・ポーランド・ギリシャ・スペイン・日本など世界6カ国以上の映画がノミネートされた第36回アカデミー賞は、映画芸術の国際的な広がりを象徴する授賞式となりました。英国映画の台頭、マイノリティ俳優の歴史的受賞、ヨーロッパ芸術映画の高い評価、超大作の技術的卓越性が一堂に会したこの年のアカデミー賞は、1960年代という映画の転換期を如実に映し出しています。ノミネート・受賞作品はいずれも1963年の映画史を彩る名作ばかりであり、現在もVODサービス等で鑑賞可能な作品が多く、映画ファンにぜひ手に取っていただきたい珠玉の作品群です。