[1998年開催(1997年映画作品対象)]第70回アカデミー賞(オスカー賞)受賞映画作品(ノミネート含む) まとめ・一覧 / List of Academy Awards(The Oscars) Nominees 〜アメリカ合衆国の優れた映画と関係者が毎年部門別に表彰されるAMPAS主催の映画賞〜
アカデミー賞(Academy Awards)とは、映画芸術科学アカデミー(Academy of Motion Picture Arts and Sciences、略称AMPAS)が主催する、世界で最も権威ある映画賞の一つです。アメリカ合衆国における映画の健全な発展と、映画芸術・映画科学の品質向上を目的に、キャスト(俳優・女優)やスタッフ(監督・脚本家・撮影監督・編集者・美術担当など)の映画関係者を毎年部門別に表彰し、その優れた功績と成果を讃えています。
受賞作品や受賞者には賞金は出ませんが、公式にはアカデミー賞功労像(Academy Award of Merit)と呼ばれる金色のオスカー像(Oscar Statuette)が授与されることから、一般的にオスカー賞(The Oscars)とも呼ばれ、世界中の映画ファンに親しまれています。
アカデミー賞の歴史は、世界三大映画祭として知られるカンヌ国際映画祭(Festival de Cannes)、ベルリン国際映画祭(Internationale Filmfestspiele Berlin)、ヴェネツィア国際映画祭(Mostra Internazionale d’Arte Cinematografica)よりも古く、第1回アカデミー賞授賞式は1929年5月16日にハリウッドのルーズベルトホテルで開催されました。以来90年以上にわたり毎年開催され続け、現在では世界中が注目する映画界最大のイベントとなっています。
特にアカデミー賞へのノミネート(候補選出)および受賞結果は世界中のメディアで大きく報道されるため、各国における対象映画の興行成績やストリーミング視聴数に対して非常に大きな影響力を持っています。ノミネートされるだけでも映画の注目度が飛躍的に高まり、興行収入が数千万ドル規模で増加するケースも少なくありません。
アカデミー賞のノミネート作品および受賞作品は、映画界で著名なプロデューサー、映画監督、脚本家、俳優、映画批評家、技術者など映画芸術科学アカデミーの会員(約1万人以上)の投票によって選ばれます。その厳格な選考プロセスと高い評価基準から世間でも大きな話題となるため、映画史に残る名作として一度は鑑賞しておくべき作品と言えるでしょう。
本記事では、このように歴史的にも大きな価値があるアカデミー賞(オスカー賞)の1998年開催(1997年公開映画作品対象)となる第70回アカデミー賞授賞式のノミネート映画作品・受賞映画作品の全結果を、部門別に詳しくまとめています。
第70回アカデミー賞(1998年)の概要と特徴
第70回アカデミー賞授賞式は、1998年3月23日にアメリカ合衆国カリフォルニア州ロサンゼルスのシュライン・オーディトリアム(Shrine Auditorium)で開催されました。司会はビリー・クリスタル(Billy Crystal)が務めました。
この年のアカデミー賞は、ジェームズ・キャメロン監督の歴史的大作「タイタニック(Titanic)」が作品賞・監督賞を含む11部門を受賞し、「ベン・ハー」(1959年)に並ぶ史上最多受賞タイ記録を打ち立てたことで映画史に大きな足跡を残しました。タイタニックは当時の世界興行収入記録を更新し、全世界で18億ドル以上を記録する空前の大ヒットとなりました。
一方で、マット・デイモンとベン・アフレックの若きコンビが脚本を手がけた「グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち(Good Will Hunting)」が脚本賞を受賞し、ロビン・ウィリアムズが助演男優賞に輝くなど、独立系映画の健闘も光りました。また、「L.A.コンフィデンシャル(L.A. Confidential)」が脚色賞と助演女優賞(キム・ベイシンガー)の2部門を受賞し、フィルム・ノワールの傑作として高い評価を獲得しました。
以下に、第70回アカデミー賞の主要部門から技術部門まで、全受賞作品とノミネート作品を一覧でご紹介します。
[1998年開催(1997年映画作品対象)]第70回アカデミー賞(オスカー賞)受賞映画作品(ノミネート含む) まとめ・一覧 / List of Academy Awards(The Oscars) Nominees 〜アメリカ合衆国の優れた映画と関係者が毎年部門別に表彰されるAMPAS主催の映画賞〜
作品賞 / Sakuhin Shou[Best Picture]
作品賞(Best Picture)は、アカデミー賞の全部門の中で最も注目される最高賞です。その年に公開された映画の中から最も優れた作品に贈られます。第70回では、レオナルド・ディカプリオとケイト・ウィンスレット主演の「タイタニック」が、壮大なスケールと緻密なストーリーテリングで圧倒的な評価を受けて受賞しました。
| 受賞 Winner |
タイタニック[Titanic] |
| ノミネート Nominees |
恋愛小説家[As Good as It Gets] |
監督賞 / Kantoku Shou[Best Director]
監督賞(Best Director)は、映画作品を最も優れた芸術的ビジョンで統率した映画監督に贈られる部門です。ジェームズ・キャメロンが「タイタニック」の壮大な映像と感動的な物語の演出で受賞し、授賞式では「I'm the king of the world!」という映画の名台詞を引用したスピーチが話題になりました。
| 受賞 Winner |
タイタニック[Titanic] |
| ノミネート Nominees |
フル・モンティ[The Full Monty] |
主演男優賞 / Shuen Danyuh Shou[Best Actor]
主演男優賞(Best Actor)は、その年最も優れた演技を披露した主演男優に贈られます。ジャック・ニコルソンが「恋愛小説家(As Good as It Gets)」で潔癖症の偏屈な小説家を見事に演じ、1983年の「愛と追憶の日々」以来2度目のオスカーを獲得しました。
| 受賞 Winner |
恋愛小説家[As Good as It Gets] |
| ノミネート Nominees |
グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち[Good Will Hunting] |
主演女優賞 / Shuen Joyuh Shou[Best Actress]
主演女優賞(Best Actress)は、その年最も優れた演技を見せた主演女優に贈られます。ヘレン・ハントが「恋愛小説家(As Good as It Gets)」でジャック・ニコルソン演じる主人公の心を開くウェイトレス役を好演し、初のオスカーを手にしました。同作品から主演男優賞・主演女優賞の両方が選ばれるのは珍しい快挙です。
| 受賞 Winner |
恋愛小説家[As Good as It Gets] |
| ノミネート Nominees |
鳩の翼[The Wings of the Dove] |
助演男優賞 / Joen Danyuh Shou[Best Supporting Actor]
助演男優賞(Best Supporting Actor)は、主演以外の役柄で最も印象的な演技を残した男優に贈られます。ロビン・ウィリアムズが「グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち」で天才青年の心を解きほぐすセラピスト役を深い情感で演じ、キャリア初のアカデミー賞を受賞しました。
| 受賞 Winner |
グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち[Good Will Hunting] |
| ノミネート Nominees |
ジャッキー・ブラウン[Jackie Brown] |
助演女優賞 / Joen Joyuh Shou[Best Supporting Actress]
助演女優賞(Best Supporting Actress)は、助演の立場で優れた演技を披露した女優に授与されます。キム・ベイシンガーが「L.A.コンフィデンシャル」で1950年代のハリウッドを舞台にした謎めいた美女を演じ、初のオスカーを獲得しました。
| 受賞 Winner |
L.A.コンフィデンシャル[L.A. Confidential] |
| ノミネート Nominees |
イン&アウト[In & Out] |
脚本賞 / Kyakuhon Shou[Best Screenplay Written Directly for the Screen]
脚本賞(Best Original Screenplay)は、オリジナル脚本の中から最も優れたものに贈られます。マット・デイモンとベン・アフレックが「グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち」で受賞し、当時20代の無名だった二人が一躍ハリウッドのトップスターに躍り出る出世作となりました。
| 受賞 Winner |
グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち[Good Will Hunting] |
| ノミネート Nominees |
恋愛小説家[As Good as It Gets] |
脚色賞 / Kyakushoku Shou[Best Screenplay Based on Material Previously Produced or Published]
脚色賞(Best Adapted Screenplay)は、小説や戯曲などの既存作品を映画脚本に翻案した中で最も優れたものに贈られます。「L.A.コンフィデンシャル」のブライアン・ヘルゲランドとカーティス・ハンソンが、ジェイムズ・エルロイの複雑な原作小説を巧みに映画化した功績で受賞しました。
| 受賞 Winner |
L.A.コンフィデンシャル[L.A. Confidential] |
| ノミネート Nominees |
フェイク[Donnie Brasco] |
外国語映画賞 / Gaikokugo Eiga Shou[Best Foreign Language Film]
外国語映画賞(Best Foreign Language Film)は、英語以外の言語で制作された映画の中から最も優れた作品に贈られます。第70回では、オランダ映画「キャラクター/孤独な人の肖像(Karakter)」が受賞しました。
| 受賞 Winner |
キャラクター/孤独な人の肖像[Karakter] |
| ノミネート Nominees |
ビヨンド・サイレンス[Beyond Silence] |
歌曲賞 / Kashou Shou[Best Original Song]
歌曲賞(Best Original Song)は、映画のために書き下ろされたオリジナル楽曲の中から最も優れたものに贈られます。セリーヌ・ディオンが歌い世界的な大ヒットとなった「My Heart Will Go On」(タイタニック)が受賞し、作曲のジェームズ・ホーナーと作詞のウィル・ジェニングスに栄誉が贈られました。この楽曲は全世界で1,500万枚以上を売り上げ、映画音楽史上最も有名な曲の一つとなっています。
| 受賞 Winner |
“My Heart Will Go On" – タイタニック[Titanic] |
| ノミネート Nominees |
“Go the Distance" – ヘラクレス[Hercules] |
長編ドキュメンタリー映画賞 / Chouhen Documentary Eiga Shou[Best Documentary Feature]
長編ドキュメンタリー映画賞(Best Documentary Feature)は、その年公開された優れた長編ドキュメンタリー作品の中から最も社会的・芸術的価値の高い作品に贈られる部門です。第70回では、第二次世界大戦後にホロコーストを生き延びたユダヤ人たちがイスラエル建国へと至る壮絶な道のりを証言と記録映像で丹念に描いた「ロング ウェイ ホーム 遥かなる故郷 イスラエル建国の道(The Long Way Home)」が受賞しました。ラビ・マービン・ハイアーとリチャード・トランクが制作したこの作品は、歴史の語り部として重要な使命を担うドキュメンタリー映画の力を世界に示しました。
| 受賞 Winner |
ロング ウェイ ホーム 遥かなる故郷 イスラエル建国の道[The Long Way Home] |
| ノミネート Nominees |
4 Little Girls |
短編ドキュメンタリー映画賞 / Tanpen Documentary Eiga Shou[Best Documentary Short Subject]
短編ドキュメンタリー映画賞(Best Documentary Short Subject)は、概ね40分以下の短編ドキュメンタリー作品の中で最も優れた作品に贈られます。第70回では、小児外科の名医が発展途上国の恵まれない子どもたちを救うために各地の医療現場で活動する姿を記録した「A Story of Healing」が受賞しました。ドナ・デューイとキャロル・パステルナークが制作した本作は、医療従事者の献身と子どもたちの純粋な回復力を力強く描き、短い尺ながら観る者の心を深く動かす作品として高く評価されました。
| 受賞 Winner |
A Story of Healing |
| ノミネート Nominees |
Alaska: Spirit of the Wild |
短編映画賞 / Tanpen Eiga Shou[Best Live Action Short Film]
短編映画賞(Best Live Action Short Film)は、実写で制作された短編映画の中で最も優れた作品に贈られます。第70回では、第二次世界大戦中にナチス・ドイツの迫害から数千人のユダヤ人を救ったとして知られる日本の外交官・杉原千畝をモデルにした作品「ビザと美徳(Visas and Virtue)」が受賞しました。日系アメリカ人俳優であり映画監督のクリス・タシマが中心となって制作したこの作品は、一人の人間の良心と勇気が歴史を変えた実話に基づき、人道主義の普遍的な価値を感動的に描いた傑作です。日本人外交官を題材とした短編作品がアカデミー賞を受賞したことは、日米の映画文化交流という観点からも歴史的な出来事と言えます。
| 受賞 Winner |
ビザと美徳[Visas and Virtue] |
| ノミネート Nominees |
Dance Lexie Dance |
短編アニメ賞 / Tanpen Anime Shou[Best Animated Short Film]
短編アニメ賞(Best Animated Short Film)は、5分から35分程度の短編アニメーション作品の中から最も優れた作品に贈られます。第70回では、ピクサー・アニメーション・スタジオが制作した「ゲーリーじいさんのチェス(Geri's Game)」が受賞しました。公園でひとりベンチに座った老人が、次々と席を移りながら自分自身の分身と架空のチェス対戦を繰り広げるというユニークな発想で、当時最先端のCGI技術を駆使した衣服の質感表現や人物の動きが高く評価されました。ジャン・ピンカヤ監督によるこの短編は、後の「トイ・ストーリー2」の冒頭シーンでゲーリーが再登場するなど、ピクサー作品のユニバース内でも重要な位置を占めており、CGアニメーション技術の歴史においても記念碑的な作品です。
| 受賞 Winner |
ゲーリーじいさんのチェス[Geri’s Game] |
| ノミネート Nominees |
Famous Fred |
劇映画音楽賞 / Geki EIga Ongaku Shou[Best Original Dramatic Score]
劇映画音楽賞(Best Original Dramatic Score)は、ドラマ映画のために作曲されたオリジナルスコアの中で最も優れたものに贈られます。第70回では、「タイタニック」のジェームズ・ホーナーが受賞しました。ケルト音楽のエッセンスを取り入れながら壮大なオーケストラサウンドで物語の悲劇と愛を彩ったそのスコアは、映画の情感を深く支える根幹となっています。特に沈没シーンに流れる哀愁漂うメロディは、映画が伝える喪失と愛の力を音楽として完璧に体現しており、歌曲賞を受賞した「My Heart Will Go On」とともに「タイタニック」を映画史に残る名作へと昇華させた立役者です。なお、同賞は翌年以降「オリジナル音楽賞(Best Original Score)」に統合され廃止されました。
| 受賞 Winner |
タイタニック[Titanic] |
| ノミネート Nominees |
アミスタッド[Amistad] |
ミュージカル・喜劇映画音楽賞 / Musical Kigeki Eiga Ongaku Shou[Best Original Musical or Comedy Score]
ミュージカル・喜劇映画音楽賞(Best Original Musical or Comedy Score)は、ミュージカルまたはコメディ映画のために作曲されたオリジナルスコアの中で最も優れたものに贈られます。第70回では、英国の炭鉱町を舞台に失業した労働者たちがストリップショーに挑む英国コメディ「フル・モンティ(The Full Monty)」のアン・ダッドリーが受賞しました。哀愁漂うユーモアと温かみのある音楽が物語に絶妙にマッチし、労働者階級の連帯と希望をユーモラスかつ感動的に演出した音楽として高く評価されました。この部門は翌第71回から劇映画音楽賞と統合され「オリジナル音楽賞」となったため、独立部門としては最後の受賞となります。
| 受賞 Winner |
フル・モンティ[The Full Monty] |
| ノミネート Nominees |
アナスタシア[Anastasia] |
音響編集賞 / Onkyou Henshuh Shou[Best Sound Effects Editing]
音響編集賞(Best Sound Effects Editing)は、映画で使用されるサウンドエフェクトの収集・制作・編集において最も優れた仕事を成し遂げたチームに贈られます。第70回では、タイタニック号が氷山と激突する衝撃音、船体が軋む金属音、大西洋の荒波の轟音、乗客の混乱と叫び声など、大規模な海難事故を圧倒的な臨場感で再現した「タイタニック」のトム・ベルフォートとクリストファー・ボイズが受賞しました。精緻に設計・編集されたサウンドデザインは、観客を1912年の夜の大西洋へと引き込む没入感を生み出し、映画体験の核心を担いました。
| 受賞 Winner |
タイタニック[Titanic] |
| ノミネート Nominees |
フェイス/オフ[Face/Off] |
録音賞 / Rokuon Shou[Best Sound]
録音賞(Best Sound)は、映画全体の音響収録・ダイアログ・音楽・効果音のバランスを含むサウンドミキシング全般において最も優れた技術と芸術的成果を上げた録音チームに贈られます。第70回では、壮大なオーケストラスコア、迫力のあるサウンドエフェクト、乗客の声を高品質に収録・ミキシングした「タイタニック」のゲイリー・ライドストロム、トム・ジョンソン、ゲイリー・サマーズ、マーク・ウラノが受賞しました。映画の壮大なスケールと繊細な人間ドラマを音響面で両立させたその仕事は、映画館における圧倒的な音響体験の実現に大きく貢献し、今日のサウンドデザインの基準をも引き上げました。
| 受賞 Winner |
タイタニック[Titanic] |
| ノミネート Nominees |
エアフォース・ワン[Air Force One] |
美術賞 / Bijutsu Shou[Best Art Direction]
美術賞(Best Art Direction)は、映画のセットデザイン・美術監督として最も優れた視覚的世界観を構築したチームに贈られます。第70回では、1912年当時のタイタニック号の一等・二等・三等客室、エンジンルーム、甲板など、実物大に近い巨大なセットを精緻に再現した「タイタニック」のピーター・ラモントとマイケル・フォードが受賞しました。メキシコのバハ・カリフォルニアに建設された専用スタジオで実際の沈没シーンを撮影するために設計されたセットは、映画史上最も野心的な美術制作の一つとして高く評価されました。その徹底した時代考証と空間の再現度が、映画全体の説得力と没入感を根底から支えています。
| 受賞 Winner |
タイタニック[Titanic] |
| ノミネート Nominees |
ガタカ[Gattaca] |
撮影賞 / Satsuei Shou[Best Cinematography]
撮影賞(Best Cinematography)は、映画の映像表現において最も優れた撮影技術と芸術的センスを発揮した撮影監督(ディレクター・オブ・フォトグラフィー)に贈られます。第70回では、「タイタニック」のラッセル・カーペンターが受賞しました。陸上のスタジオセットから大量の水が流れ込む水没シーン、深海で撮影された実際のタイタニック号の残骸映像、そしてCGIと実写をシームレスに融合させた大海原のショットまで、多岐にわたる撮影環境において一貫した映像品質と美しい構図を維持した撮影技術は、映画の視覚的完成度を決定づけました。
| 受賞 Winner |
タイタニック[Titanic] |
| ノミネート Nominees |
アミスタッド[Amistad] |
メイクアップ賞 / Makeup Shou[Best Makeup]
メイクアップ賞(Best Makeup)は、映画における特殊メイク・ヘアスタイリングを含む外見の造形において最も優れた技術的成果を上げたチームに贈られます。第70回では、コメディSF映画「メン・イン・ブラック(Men in Black)」のリック・ベイカーとデヴィッド・ルロイ・アンダーソンが受賞しました。リック・ベイカーはアカデミー賞史上最多となるメイクアップ賞を受賞した業界の第一人者であり、本作では個性豊かで多種多様なエイリアンキャラクターを次々と生み出しました。ユーモラスでありながらも驚くほどリアルな造形は、SF映画の特殊メイク技術の水準を大きく引き上げ、映画の世界観構築に決定的な役割を果たしています。
| 受賞 Winner |
メン・イン・ブラック[Men in Black] |
| ノミネート Nominees |
Queen Victoria 至上の恋[Mrs Brown] |
衣裳デザイン賞 / Ishou Design Shou[Best Costume Design]
衣裳デザイン賞(Best Costume Design)は、映画の衣裳デザインにおいて最も優れた芸術的功績を上げたデザイナーに贈られます。第70回では、「タイタニック」のデボラ・リン・スコット(Deborah Lynn Scott)が受賞しました。1912年当時のエドワード朝様式の衣裳を忠実に再現しながら、一等客室の上流階級から甲板の移民乗客まで、各社会階層の人物像を衣裳によって鮮やかに描き分けた仕事は、映画の時代考証と視覚的豊かさに大きく貢献しました。特に主演のケイト・ウィンスレットが身に纏ったドレスの数々は映画の象徴的なイメージとして今も語り継がれており、20世紀初頭のファッション史の一側面をも体現しています。
| 受賞 Winner |
タイタニック[Titanic] |
| ノミネート Nominees |
アミスタッド[Amistad] |
編集賞 / Henshuh Shou[Best Film Editing]
編集賞(Best Film Editing)は、映画の編集において最も優れた技術的判断と芸術的センスを発揮した映画編集者に贈られます。第70回では、上映時間194分という長尺でありながら観客を一瞬たりとも飽きさせない緩急自在のリズムを実現した「タイタニック」のコンラッド・バフ、ジェームズ・キャメロン、リチャード・A・ハリスが受賞しました。愛の物語としての前半部と、船が沈んでいく後半の緊迫感あふれるサバイバルパートを巧みに組み合わせ、3時間を超える映画を最後まで引き付け続けた編集の妙は、映画のテンポと感情の流れを完璧にコントロールしています。
| 受賞 Winner |
タイタニック[Titanic] |
| ノミネート Nominees |
エアフォース・ワン[Air Force One] |
視覚効果賞 / Shikaku Kouka Shou[Best Visual Effects]
視覚効果賞(Best Visual Effects)は、映画のCGI・デジタル合成・特撮などビジュアルエフェクト全般において最も優れた技術的成果を上げたチームに贈られます。第70回では、タイタニック号の進水から沈没に至るまでの全過程を前例のないリアリティで映像化した「タイタニック」のロバート・レガート、マーク・ラソフ、トーマス・L・フィッシャー、マイケル・カンファーが受賞しました。ミニチュアモデル撮影とCGI、実写映像を高度に融合させた技術は当時の最高峰を誇り、数千人の乗客が乗り込んだ大型客船が嵐の大西洋に沈む様子を圧倒的な説得力で描き出しました。1997年当時の視覚効果技術の到達点を示した本作は、その後の映画VFX産業の発展にも多大な影響を与えています。
| 受賞 Winner |
タイタニック[Titanic] |
| ノミネート Nominees |
ロスト・ワールド/ジュラシック・パーク[The Lost World: Jurassic Park] |
第70回アカデミー賞(1998年) まとめ
第70回アカデミー賞(1998年開催)は、ジェームズ・キャメロン監督の「タイタニック(Titanic)」がアカデミー賞史上最多タイとなる11部門受賞という空前絶後の偉業を達成し、映画史に永遠に刻まれた記念碑的な授賞式となりました。1998年3月23日にロサンゼルスのシュライン・オーディトリアム(Shrine Auditorium)で開催されたこの式典で、タイタニックは作品賞・監督賞・撮影賞・編集賞・美術賞・衣裳デザイン賞・視覚効果賞・音響編集賞・録音賞・劇映画音楽賞・歌曲賞の全11部門を獲得しました。この記録はウィリアム・ワイラー監督の「ベン・ハー」(1959年、第32回)が樹立した11部門受賞と並ぶ最多受賞タイ記録であり、後に「ロード・オブ・ザ・リング/王の帰還」(2004年、第76回)がこの記録に追いつくまでの6年間、頂点に君臨し続けました。製作費は当時のアメリカ映画史上最高額となる約2億ドルに達し、全世界興行収入は18億ドルを超えて「スター・ウォーズ」が持っていた記録を塗り替え、「タイタニック」は世界で最も興行収入を稼いだ映画となりました(当時)。
しかし、第70回アカデミー賞はタイタニックの独壇場だけではありませんでした。演技部門では「恋愛小説家(As Good as It Gets)」からジャック・ニコルソン(主演男優賞)とヘレン・ハント(主演女優賞)のダブル受賞という快挙が実現しました。同一作品からの主演男優・主演女優ダブル受賞は映画界でも極めてまれな出来事であり、ジャック・ニコルソンにとっては1983年の「愛と追憶の日々」以来2度目、ヘレン・ハントにとっては初のオスカーとなりました。また「グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち(Good Will Hunting)」では、当時まだほぼ無名だった20代のマット・デイモンとベン・アフレックが書き上げた自作脚本が脚本賞を受賞し、ロビン・ウィリアムズが天才青年の心に寄り添うセラピスト役で助演男優賞を獲得。若き才能とベテランの演技力が交差する感動的な夜となりました。
「L.A.コンフィデンシャル(L.A. Confidential)」はジェイムズ・エルロイ原作の複雑なクライム小説を鮮やかに映画化した脚色賞と、キム・ベイシンガーの助演女優賞の2部門を受賞し、フィルム・ノワールの傑作として批評家とアカデミー会員双方から絶賛されました。英国の失業した労働者たちが笑いと涙のストリップに挑む「フル・モンティ(The Full Monty)」は作品賞にもノミネートされ、ミュージカル・喜劇映画音楽賞を獲得。低予算のインディーズ映画が世界的な評価を得た事例として映画史に残っています。「メン・イン・ブラック(Men in Black)」はメイクアップ賞を受賞し、エイリアンたちを生き生きと造形した特殊メイク技術の高さを証明しました。さらに、短編アニメ賞を受賞したピクサーの「ゲーリーじいさんのチェス(Geri's Game)」は後の「トイ・ストーリー2」へとつながるピクサー黄金期の幕開けを告げた作品であり、短編映画賞を受賞した「ビザと美徳(Visas and Virtue)」は日本人外交官・杉原千畝の人道的行為を描いた日米にまたがる感動作として特筆に値します。
外国語映画賞では、オランダ映画「キャラクター/孤独な人の肖像(Karakter)」が受賞し、英語圏以外の映画文化の豊かさを改めて示しました。また、ジェームズ・ホーナーとウィル・ジェニングスが作り、セリーヌ・ディオンが歌って世界的大ヒットとなった歌曲賞受賞曲「My Heart Will Go On」は、公開から約30年が経過した現在でも世界中で歌い継がれ、映画音楽の歴史における不朽の名曲として輝き続けています。第70回アカデミー賞は、超大作と個性的な作品群が共存し、技術の最高峰と人間ドラマの深さが同時に評価された、映画史における最も輝かしい1ページです。
1997年に公開されたこれらの映画作品は、公開から四半世紀以上が経過した現在でもなお多くの映画ファンに愛され続けており、NetflixやAmazon Prime Videoなどの動画配信サービスでも繰り返し視聴されている不朽の名作揃いです。「タイタニック」「恋愛小説家」「グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち」「L.A.コンフィデンシャル」「フル・モンティ」「メン・イン・ブラック」は、いずれも映画初心者から上級者まで幅広い層に自信を持ってお薦めできる傑作です。アカデミー賞の歴史を体系的に振り返る上でも、また映画鑑賞のリストとして活用する上でも、ぜひ本記事の受賞・ノミネート作品一覧をご参考ください。

